【資料】4.3の文字資料整理

原神

更新中

武器

裁断

家名を捨てた貴族の少女がかつて使っていた武器。敵と愛する者の血で染まったことがある。

「いいかい、レティシア。お前はランドルフ家の長女だということを忘れないでおくれ。」
「私たち貴族が席に就けば、国という船は我々のために傾く。」
「私たちが倒れれば、無数の家々とそこに住む平民たちを押し潰すことになる。」
「だからよく聞きなさい、愛しいレティシア。」
「常に気品ある振る舞いと品位ある身だしなみを保ち、喜怒哀楽をあまり表に出してはいけないよ。」
「なぜなら、私たち一族は平民に富貴を与えることも、サーンドル河に送ることもできるのだから。」
父はそう言ったが、少女は貴族である前に、ただの少女だった。
手が煤や機械油で汚れていないが故に、気持ちは自然と「冒険」に向かう。
父や兄、使用人たちに隠れ、日射しも雨も当たらない地下都市に、変装して忍び込んだ。
彼女はただ、自分の運命を握ることのできない卑小な人々の生活を見てみたかったのだ。
もしかしたら、パルジファルのマジック1よりも面白いかもしれない!と少女は密かに色めきだった。
しかし、冒険は彼女の期待とは異なっていた。それもそうだ、それは誰かが用意したものではないのだから。
彼女が得たものは、パーティーで同年代の貴族の友人と笑って話すような物語とは違っていた。
音楽、嘘、毒酒のような、見えない危険が刃を光らせたとき…
「おやおや、僕たちのサーンドル河にわざわざやってくるなんて、一体どこのお嬢ちゃんだい?」
四方から近づく恐ろしい影を払ったのは、柔らかな見覚えのある光だった。
「あなたは…」
彼の名前は喉まで出かかっていたが、実際に口から出たのは「どうやって自分の変装を見破ったのか」ということだった。
「嘘をつくことに慣れてないみたいだね。よそ者であることを認めているのと同じじゃないか?」
「…それに、君の服は煤や機械油で汚れていないし、血の跡もない。」
「そうそう、君の歩き方からして、ズボンを履くのにも慣れていないみたいだ。」
彼女の知っているリードが、なぜサーンドル河を自由に歩いているのか聞くと、若い男性はこう答えた。
「ここでの出来事を君の家族や友人、使用人たちに知らせないでくれるかな。そうしてくれるとありがたいんだけど。」
ボス2が言うように、太陽の下にあるものは彼らのものであり、サーンドル河の中のものは僕たちのものだ。」
「大切なレティシア、今は自分がランドルフ家の長女だということを忘れてほしい。」
「一人の人間として僕についてくるんだ。そして埃に覆われたことのない、その明るい両目で見てくれ――」
「君と同じように赤い血の流れる、血気と愛情にあふれる同胞たちが暮らしてる世界を。」
それは結局のところ、彼女の期待する冒険とは異なっていた。それもそうだ、運命の采配のもとで、
彼女はパーティーで同年代の貴族の友人や使用人たちに、笑って話せないような物語を経験したのだから…
「レティシア、君の高潔な魂を心から愛する。」
「僕らはもう、樹木を叩き切る斧の柄じゃない。」
「もしいつか、僕が俗世の栄華に浸ることになったら、」
「その時は君が、僕の運命を裁決してほしい…」
……
しばらく時が経って再び父親に会ったとき、彼女はすでに「ローズ」という偽名を使っていた。
無理やり着せられる華麗な服には慣れず、戦斧の重さのほうにより親しみを持つようになっていた。
ただ、彼女は記憶の中の厳格で心優しい父親の、こんなにも年老いて弱くなった姿を直視できなかった。
「親愛なるお父様、私は自分の愛する人、愛する人々と誓いを立てました。」
「私が今もまだ生きているということは、私たちの血がまだ絶えていないということ。」
「それに私はまだ、自分のせいでランドルフの家名に消えない汚名を着せるようなことはしていません。」
「レティシアよ。私はお前のためにろうそくに火を灯さなかった日は一度もない。」
「お前が過去にランドルフの名を捨てようとしていたとしても、私たちは変わらず親子なのだ。」
「さあ、取るに足らないゲームはもう終わった。私たちの家に帰ろう。」
お前の子にはもともと罪がないのだから、お前の血肉を無暗に捨てるつもりはない。」
「夫のことに関しては、私もランドルフの魔法を少しは使うことができる…」
……
しかし、彼女は最終的に夢の中で思い出した。その時の艦砲の爆撃は、私たちを少しも動揺させなかった。
猟犬が忍び込む暗い道は、よそ者に知られるべきではない。

おそらくローザ・リードに関するテキストです。ポワソン町の包囲に巻き込まれたと考えられる人の一人。元々はレティシアというフォンテーヌの上流階級ランドルフ家の長女だったが、リードに嫁いで「ローズ」という名前で活動していた。

ポワソン町の包囲については相変わらず謎です。エドワルド・ベイカーが人質をとって立てこもった事件なのですが、ファントムハンターはこれに対して強硬策に出て多数の死傷者を出したと考えられます。このときに孤児となったのがルネとジェイコブ。これについては前に長い記事を書きました。

個人的にはバザル・エルトン(副院長)が退役したのもこのポワソン町の包囲が原因だと考えていますが、今のところ根拠がありません。

「スーパーアルティメット覇王魔剣」

「…安いダンボールでできた剣じゃないからな!えっと…その…これはかつてカニ大帝を打ち負かした…スーパーアルティメット覇王魔剣なんだぞ!」

遠い昔、ロマリタイムフラワーがまだその名前で呼ばれていなかった頃、遠い大海の中に偉大なカニ魔大帝が住んでいた。
カニがなぜそんなに偉大なのか、魔大帝が統治する国や民はどこにいるのか、それらを誰も知らなかったが、皆がそう言うので魔大帝の威名も広大な海原へと知れ渡っていった。これが生まれ持った崇高さというやつなのだろうか?威張るカニ魔大帝はそう考え、皆が自分を敬遠している事実を次第に受け入れていった。
世界の高みにいる(もしくはそう自称する)人間のように、偉大な陛下も大帝である自分の境遇に嘆いた。大帝に友達などいるはずがない(ここにもやや上から目線が含まれている)。つまるところ、チョキチョキと音を立てる鋭いカニの爪は、自分を見慣れていない相手をいとも容易く驚かせることができるし、もっと信念の固いやつの運命の糸を断ち切ることだってできる。そして、大帝の宝物庫にはモン·オトンヌキと同じくらい高さのある金貨が積まれており、フォンテーヌの美味しいクッキーなど簡単にすべて買うことができた——これこそ、王者の身分にふさわしい生活だ!そうであろう?
ただ、彼には一緒に遊んでくれる友達がいない。退屈なときや心が傷ついたとき——つまり、たくさんのクッキーでも楽しい気持ちになれないとき——陛下は、その巨大なハサミで水草を剪定するしかなかった。当然カニ陛下も結局はカニなので、他のあらゆるカニより強くても、水草を剪定する能力はそこら辺のエイと大差ないだろう!
ある日、偉大なカニ魔大帝がブクブクと孤独な泡を吐いていたとき、一人の小さなメリュジーヌに出会った…
「こら!魔大帝の宮廷に侵入してくるとは度胸のあるやつだ。なにしに来た?」
(カニ大帝は激しく火を吹いたが、内心少し嬉しかったし、怖くもあった。海原にいるやつらは、大帝の威厳を前にするとそそくさと去っていくからだ。だから、大帝はもう長いこと誰とも話していなかった。)
「カニさん」と小さなメリュジーヌが言った。「あなた、何だか楽しくなさそうだね。一緒に遊ぼうよ、そしたら楽しくなるよ!」
「わかっていないな」…続けてカニ大帝は最初メリュジーヌが自分のことを「陛下」ではなく「~さん」と呼んだことをとがめようと思った。だが結局そのことは口にせず、こう言った。「覇王は小さなメリュジーヌとは一緒に遊べない。でないと王者の威厳を失ってしまうからな。」
「王者の威厳がなくなっちゃったら、どうなるの?」
「もし威厳を失ったら、覇王はもう覇王ではなくなる。他のやつよりハサミが大きくて甲羅が厚いことを除けば、普通のカニと変わらなくなってしまうな。」
「カニさんのハサミは私の体より大きいし、足だって私より多い、それに甲羅は私の家の壁よりも厚いよ。それに金貨やクッキーの他にもカニさんはいい物をたくさん持ってるし、すっごく楽しいはずだよね?…あっ、わかった、きっと王者の威厳がカニさんをつまらなくさせているのね。」
「小さなメリュジーヌよ、お前は王になったことがないから知らないのだろう。だから、その無知については大目に見てやる。覚えておけ、帝王は自分が楽しいかどうかなど気にするべきではないのだ。」
「でも、カニさんだって王になる前は普通のカニだったんでしょ?カニさんがつまらなそうにしてたら私もつまらないよ。カニさんのために、王の威厳を捨てさせてあげる!
「こら!身のほど知らずの小さなメリュジーヌめ。自分の統治を自ら放棄する帝王など、この世のどこにいるというのだ!」陛下は怒ってハサミを振り回した。「そうだな…例えば、あくまでも例えばだが、勇者が聖剣で魔王を倒したら…覇王であった者も小さなメリュジーヌと遊んでやるしかないだろうな。」
「あっ!そんな方法もあったんだ!」メリュジーヌは嬉しそうに大きな声を上げたが、別の問題に思い至って、がっかりした様子で言った。「でも…勇者がどこにいるかも、聖剣がどこにあるかもわからないよ…」
「ええい、そんなことはどうでもいいのだ!魔王を倒しさえすれば誰でも勇者になれるし、どんな武器でも聖剣となる」と大帝は口早に言った。「オホン!身のほど知らずのメリュジーヌよ、理解したか?」

「『…カニさんがそう言ってたから、みんな力を貸して!』」彼女がそう言うと、メリュシー村のメリュジーヌたちは、彼女を助けなくてはと思った!彼女たちは大きな貝殻を拾ってきて彼女のために盾を作り、水草を月桂の代わりにして冠を作り、エリナスの内部の切れ切れになった帆をマントにして、最後に貴重な乾燥したダンボールで宝剣を作った。
こうして、勇者メリュジーヌはカニ魔王を倒すための遠征に出た。そして、究極無敵の魔剣で威張りをきかせるカニ魔王を倒したのであった。こうして魔王でなくなった「カニさん」は、その時からメリュジーヌたちのよき友達となったのだ…

簡単な議論の末——メリュジーヌたちは、かつて映影で異彩を放ったメリュシー村の最強の剣を究極無敵の勇者へと贈り、それを友情の証とすることにした。

メリュシー村で映影を撮るときに使ったと思われる伝説の宝剣。

マメール、イアーラ(釣りをしてる子)、カノティラはわかるんですがもう一人がセレーネ?なんか違う気もする。

4.3のメリュジーヌの追加要素はたまったら追記します(あとキノコンイベのも)、

聖遺物

秘境チェック

秘密結社=水仙十字結社によって使われていた廃都。「より古い団体」とはおそらく「金色の劇団」のことを指す。

在りし日の歌

「純水騎士」に関するテキスト。純水騎士というのはレムリアの時代、レムス王の侵略に対して純水精霊を守る為に立ち上がった騎士です。元ネタの一つは円卓の騎士。エリニュスも純水騎士の一人でした。たぶん「薔薇と銃士」で掘り下げられると思うので今までのテキストと合わせてもう一度記事にしたいと思います。

詳しくはこちらの記事で書きました。フリーナはもしかして純水騎士だったのでは?と考え、それで掘り下げた記事です。魔神任務終わった後だと違うと断言できてしまうのですが。今読み返すと長すぎですねこの記事。最近は6000字以下にまとめるように意識しています。

在りし日の遺失の契

あらゆる水3がまだ合流していなかった頃、 黄金の権威が荒れ狂う海のように世を席巻し、鋼鉄の軍団は行く先々で蛮族たちをみな従わせた。
軟弱な昔日の人が最後には新たな秩序の楽章に屈するであろうと、そう調律師たちが固く信じていたのと同じように、 輝かしい栄華は永遠に続くものだと思われていた…
しかし文明と秩序の象徴であり、比類なき偉大なる旋律は、 野蛮な北方に阻まれることとなる。
バラバラであった各部族がアルモリカの若き継承者のもとに団結したのだ。 そして 帝国の急所ともいえる辺境で反逆の狼煙を上げたのである…
これが後世に「純水騎士」 として讃えられる人物であった。 弱き肉体でもって、 大空 を覆う黄金の権威に反旗を翻そうとしたのだ。
多くの集落を統率していた歌い手の女性は、 決して君王として気取ることはなかった。 自分は万水の主の天啓を聞き、その意志に基づいて行動する従者であると自称 した。
遥か遠くにいるカピトリウムの智者たちは、この荒唐無稽な主張を子供の妄想から生まれた戯言に過ぎないと鼻で笑った。
しかし、彼女の軍隊は依然として暴風のごとく、互いに征伐を続ける集落を数多く席巻した。 剣をもって、 同胞たちに万水の主と契約するよう説得したのであった。 後世の詩歌や劇において、 騎士の誓約には様々なバージョンが存在する。だが、どの版であってもある二つの誓約は不可欠なものである。
其の一、 エゲリアの信徒に対して剣を向けないこと。 其の二、悪人に一切の妥協を許さないこと(または、わずかな穢れも容認しないこと)。
「私たちは、 白銀の不朽の花に誓います。 黄金の僭主を高海から追放し、血と涙でもって不義の者たちを一掃すると」
「そして、 清らかな泉が再び元のように流れるまで、純水に由来する精霊たち、万水の主が遺した恩恵を守ると」
こうして絶えることのない戦は疫病のようにたちまち広がり、傲慢な黄金を、そして無垢なる白銀を焼き尽くした。
調律師の紛争を無くすという悲願も、ついには水泡に帰した。憎しみはもはや取り返しのつかない結末に向かって、怒涛のごとく押し進んでいく。
それは、救いの光がついに地平線の彼方に出現するその時まで続いた――しかし、 それは救いを渇望する人々の目にはもう映らない…

「黄金の権威」=レムス王、「鋼鉄の軍団」=魔像。蛮族や「昔日の人」はレムリア人以外の存在を言います。深海の龍族がいました。「万水の主」=おそらくエゲリア。

「純水騎士」の始まりについて書かれているテキスト。アルモリカ4(Aremorica)という地方の継承者を中心に諸部族が一致団結してレムス王の専制に反旗を翻した。

在りし日の空想の念

あらゆる水がまだ合流していなかった頃、海草のように短命な集落で、 柔らかい夜風が愛おしい月明かりを撫でていた。
まだ神王の法のことも、高天が定めし行跡のことも知らない少年は、蝶の羽飾りを彼女の耳に着けた。
昔日の人の伝承では、舞い立つ蝶は魂を運ぶ者であり、死してなお不変の愛と誓いの象徴であった。
当時、まだ楽師になる前の勇士は、 無数の明日はやがて無数の昨日のように、蝶の舞いの如く美しい今この瞬間に帰すものだと信じていた・・・
しかし、昔日の空虚な願いが血と炎の哀哭の中で沈むように、運命の乱流は災厄の奔流へと突き進んでいった。
再び相まみえたとき、そこは遥か遠く離れた都市となり、互いに争いを続けていた多くの部族は一つにまとまっていた。
若き楽師は放浪の旅人を装い、武芸大会で、後世まで語り継がれるであろう高貴な英傑たちを数えきれないほど打ち倒した。
そして、ついに優勝者として王との謁見の機会を得ると、栄光と調和の理想を語り、終わらない戦争や憎しみを一掃しようとした。
たとえ最も聡明な楽師であっても、その身分が露呈したとき、湖光のような鋭い刃を受けることになるとは予想していなかった。
偽りの身が処断され、その意識が無に帰す直前――楽師が最後に聞いたのは、彼を懐に抱いた彼女のつぶやきであった…
「■■■■、私の■■■■…もう意に反することを無理に言う必要はありません」 「あなたの魂を冒涜し石牢に閉じ込めたのは、あの呪われた僭主であることを私は知っています」
「心配はいりません。 私の■■■■…あの時の約束を忘れたことは、一時もありません」
「いかなる代償を払ってでも、私があなたをあの永劫に冷たい檻から救い出してみせます」
「私たちが再び万水の主の懐で寄り添い、苦厄に悩まされることがなくなるその時まで」
「青き蝶が再び舞い、 私たちの魂をあらゆる水の対岸へ運ぶその時まで」

在りし日の伝奏の詩

あらゆる水が一つに合流した頃、 往日の廃墟を乗り越え、 慈愛に満ちた女主人が新たな都市を建てた。
長き夜は終わりを告げ、 白昼が到来した。 過去の出来事は夢の跡となり、 夜闇とともに消滅した。
真の黄金時代の到来であった。 もう権威に陶酔する僭主も、復讐に溺れる蛮族もい ない。
広大な楽章は二度と蘇ることはなく、愛と正義を讃える時だけが、朝の風とともに高海の四方を吹き抜けていった…
それらのうち、一部の題材は時を経ても衰えることなく、数千年が過ぎた今日でも人々の間で語り継がれている。
例えば「純水騎士の冒険」は多くの詩人や劇作家によるアレンジを経て、市民の誰もが知るものとなった。
言い伝えでは、彼らはかつて白銀の甲冑に誓いを立て、まだ汚れていなかった源露を守るために純水精霊たちと共に戦ったという
さらには、彼らは無数の試練を経てついに伝説の 「純水の杯」 を手にし、あらゆる水の女王の帰還を迎えたのだという…
「数多の英傑が集いし栄華の宮廷、竜の血を受けし騎士」
「魔法使いと塔に囚われし貴婦人、聖なる器を探す旅」
盛宴と誓いの言葉、 悲恋と離別。多くの幻想の中にあった美しい詩篇が、「エリニュ ス」が見守る中、 幕を上げた。
ただ、その同名の英雄は彼女とは何ら関わりがない。 往日の名を冠した歌は、結局のところ今日の夢に過ぎないのだ。

「慈愛に満ちた女主人」とはエゲリアのことでしょう。

聖杯に関する話が書かれています。

在りし日の約束の夢

あらゆる水がまだ合流していなかった頃、 昔日の人の集落では「純水の杯」に関する伝説が語られていた。
古来より宝杯の本当の姿を目撃した者は誰もおらず、 遥か昔から伝わる精霊たちのわずかな言葉だけが、
「原初の水で満たされた金の杯」 が、 人々の幻想から生じた単なる虚像ではないことを証明していた。
言い伝えによれば、その聖なる造物はあらゆる恐るべき傷を癒やし、老人を若返らせ、死者を蘇らせることができるという。
そして、最も純粋な者だけがその姿を拝むことができ、 永遠の命と無限の知恵を得ることができるとされていた。
古代の哲学者が言うように、 盛衰は入れ替わるもので、永遠に維持されることはない。一夜にして、調和と栄光の歌は突如終わりを告げた。
文明を誇った人々の哀哭は、 永遠の名を冠した黄金の都と共に終わりのない海の底へと沈んでいった。
古代の哲学者が言うように、盛衰は入れ替わるもので、永遠に維持されることはない。 一夜にして、 本来の復讐の誓いは突如破られ、
血と涙によって仇敵を一掃すると誓った歌い手が、 いつものように悪夢から目覚めると、向こうに見えるのは怒れる荒波だけであった…
原罪を背負いし高海の子よ、 苦しみを味わいし我等が兄弟姉妹たちよ」
「汝は運命の凶兆を知り、 最後に訪れるであろう災禍を目にした」
「心を強く持て。 怯える必要も、恐れる必要もない」
「原初の水を求めよ。 あらゆる願いに応じる原初の杯を求めよ」
「彼女に願いを告げれば、 すべての罪に対する慈悲を、やがて得られるであろう」
そうして精霊との約束のため、歌い手は 「純水の杯」 を探す旅へ出た。
「純水の杯がすべての願いを叶えてくれる」 という伝説が、人々の間で広まっていっ た。
夕闇の果てが訪れ、 彼女は 「原初の杯」 がどういう物であるかを初めて知ることになる…

穢れなき愚者というやつですね。

在りし日の余韻の音

あらゆる水がまだ合流していなかった頃、 昔日の人の集落には鐘を鳴らすしきたりがあった。
鐘の音は、日の出と日の入りを告げるとき、また誕生や弔いのときにも鳴り響いた。
そしてついには、 黄金の衾が空を覆う終末の瞬間、 破滅を告げる鐘が鳴り響いた。
疲れることのない鋼鉄の軍団は、もはや誰もその名を知らない集落を地図上から抹消した。
しかし、わずか数十年後のこと…栄華を極めた帝国が同じ運命を辿ることになるとは誰も予想していなかった。
金で飾られた宮殿は瞬く間に瓦礫となり、 高貴なる音律は野心と裏切りのもとに崩壊した。
神王の悲願はこうして幕を閉じた。 だが、黄金の歌の残響は依然として人々の心の中で反響していた――
ある者は昔日の栄光に執着し、 あらゆる代価を払ってでも再びその楽曲を奏でようと…
そしてある者は昔の名を捨て、 平和な明日のために、潜伏を続ける不気味な影を駆逐しようとした5
またある者は、過去の名前だけを残し、縹渺たる伝説とともに歌の中に姿をくらました…
「あらゆる願いを叶える聖なる器…ふん、 あの純水の精霊がそう言ったのであっても、あまりに荒唐無稽な話です」
「水の中の血を洗い流せないのと同じで、罪を洗い流せる者はいない。たとえ人々がそれを忘れたとしても、罪は罪なんですから」
「白昼の輝きを取り戻せないのと同じで、 過去を取り戻せる者はいない。 過去がとうの昔に失われたことなど、私でさえ知っていますから」
「……」
「しかし、もし本当にそのような聖なる器がこのおかしな世界に存在するというのなら、それが本当にあらゆる願いを叶えられるのだとしたら…」
「もし本当に未来のためにすべての涙を拭き、 高海の後継者に二度と過去の苦痛を味わわせないのだとしたら…」
「最後に一度だけ、 私をその虚妄に溺れさせてほしい」
数十年もの間、彼女の耳元から離れることのなかった悲しみと哀哭、故人たちの幻影、
彼女のために死んだ者、 彼女によって死んだ者、そのすべてがもう重要ではなくなった。
独り山谷に足を踏み入れる直前、昔日の晩鐘が再び聞こえたような気がした・・・
それは間違いなく黄昏の太陽であったが、それを黎明の光明として見る者もいた。

残響の森で囁かれる夜話(「親切な魔法使いの物語」)

この聖遺物は「親切な魔法使いの物語」を内容とするもので、女の子とパイ(子犬)と一緒に本を読むという形式になっています。つなげた方が読みやすいので繋げちゃいます。

それは大昔の出来事というわけではなかった。 残響の森の中に、どんな願いでも叶えられる魔法使いが住んでいるという伝説の話だ。
しかし、その魔法使いは他の物語に出てくる魔法使いと一緒で風変わりな性格をしていた。魔法使いは森全体を霧で覆い、森に入った侵入者を残響によって惑わせる魔法を使っていた。そのため、 彼女の隠れ小屋を見つけられる人はほとんどいない のだ。 願い事など、なおのこと難しい。
ところがある日、ついに一人の若者が魔法使いの家の扉を叩いた。
その若者はもともと青い花を探していたのだが、途中で金の羽の蝶に目を奪われ、 それを追いかけていたらいつの間にか小屋の前に辿り着いていたのだ。 その時になって、彼は初めて願いを叶えてくれる魔法使いの伝説を思い出した。 そしてしばら く迷ったあと、 家を訪ねることを決めたのであった。
彼が三度目のノックをしようとすると、 扉が開いた。 「願い事があるのですが…」 若者が言った。
「皆がそう言う…」 魔法使いは彼の話を遮った。「お前の願いを叶えるのは容易いこと。しかし、願いの対価は人によって異なるぞ。」
「僕には愛する少女がいる。けれど、彼女の心はすでに他の誰かのものです。でも僕は、魔法の力で彼女の気持ちを変えさせたいとは思わない。ただ、彼女にはこの世のすべての幸せを手に入れてほしいと思うのです。もしこの願いを叶えてもらえる なら、僕の持つものすべて…時間でも、お金でも、 魂でも全部を捧げるつもりです。
「お前の願いは叶うだろう。 だが、その対価を払う時は将来訪れる。それがお前の魂とは限らない…魔法使いは常に身勝手だからな。」
「でも、この世に魂よりも貴いものがあるでしょうか?」
「その時になれば分かる。 約束の時が訪れたら、 金のごとき心だけが量られることに なるだろう。」

魔法使いの承諾を得たとはいえ、その若者自身も願いが叶うというのがどういう光景なのかを想像できなかった。
より具体的な願い…例えば、 底なしの富や他者を従わせ臣服させるような権力なら想像しやすい。 でも、その上にある幸福とは何だろうか?
若者は、魔法使いは多くの魔道具を持っており、その奇怪で非凡なコレクションの力を利用しているのだと聞いたことがあった。彼は好奇心を抑えきれず、魔法使いにどの道具でこの願いを叶えるのかと聞いた。
魔法のつけペンで書いた言葉はすべて現実となる。 彼女が運命の寵児となるだろう。」
魔法使いがインク壺を軽く揺らすと、 黒い水が波のようにうねる。それを若者は不思議そうに眺めた。 彼には、その中の波によって浮き沈みする小さな孤島が、まるで自分たちの暮らす世界のように見えた。これまでに見たことのない様相と風景がスケッチブックのページのようにめくられていく…
彼はそれを見ているうちに魅了され、インク壺の広い口から中に落ちて、黒い水に溺れそうになった。
「インク壺の中には彼女が想像することのできるすべてが入っている。彼女が願えば、すべては彼女のものとなる。」
紙の上につけペンを走らせたことで、少女の運命は変えられた
いつからかは分からないが、少女は次から次へとやってくる幸運に驚かなくなった
彼女からはあらゆる憂いが消え、ほぼすべての事が彼女の思い通りに進んでいった。彼女が欲しいと思ったものはすべて、最終的に何らかの形で彼女の手に渡った。人々はみな彼女を愛した。 彼女の容姿を褒め、彼女の品行を称賛した。以前は自分の事など気にもかけないだろうと思っていた人ですら、すっかり態度を変えてしまった。
次第に、彼女は自分に向けられる称賛の言葉や羨望の眼差しに慣れていった。 彼女の容姿は決して特別良いわけでもないし、品行も至って普通だが、運命は彼女にすべての恩恵を与えた。

「バカバカしい。 青いリボンなんかがそんなに珍しいの?」 少女は容赦なく訪問客を追い払い、その人が持ってきたプレゼントを隅に投げ捨てた。 確かに、昔はカワセミのように青いリボンを気に入っていたこともあったが、今ではそんなありきたりな物にはまったく興味をそそられなくなっていた。
「ああ、かわいそうな子!」母親がため息をついた。
少女は母親の説教に嫌気が差していた。彼女のもとに幸運が訪れたのはほんの短い間だったが、富はいとも簡単に手に入ったし、当然のように人心をあっさりと掌握できた。この世ははじめから彼女を中心に回っているのだと、何度も思った。「母親なのに、どうしてお母さんは他の人みたいに私を愛してくれないの?」自分を愛してくれない母親など必要ないのかもしれないと、彼女は思った。 その後、少女は家と家族を残して出ていった。これで魔法がもたらす幸運を享受で きるし、良心の呵責に煩わされることもない。
彼女は、感動する風景や食べ物がこれ以上なくなるまで、あらゆる場所を旅した。その暮らしはまるで終わることのないダンスパーティーのよう一色々な人が彼女 のもとを訪れたが、そのダンスホールに留まる人は誰もいなかった。
ある時は故意的に、彼女は「友達」と呼ぶ人に意地悪く接した。しかし彼女の行動がどんなに礼を欠いたものでも、次の日になれば友達はみな笑って彼女を許し、今までと同じように彼女を愛した。
人々は彼女にただひたすら尽くすのみで、何かを求める者はいなかった。

少女は母親が亡くなったことをかなり後になって知り、久しぶりに故郷に戻ってきた。よく知っている人も知らない人も、 みな他の場所の人たちと同じように彼女に礼儀正しく接してくれた。
「すべてが君の思い通りになったのに、なぜ笑わないんだ?」
そう話す若者を彼女は見たことがあった。もしかしたら、単なる多くの追随者のうちの一人かもしれない。
「お母さんの言う通りだった、私はかわいそうな子供。この恐ろしい呪いのせいで、私は二度と本当の意味で幸せにはなれない。」
「ああ!君は無私のプレゼントを呪いと呼んでいるのだね。これはある人が魔法使いと取引し、 自分を犠牲に換えたものだ。それに彼は、君からの見返りを得ることなど考えもしてなかった。 この世にこれほど偉大な愛があるとでも?」
「彼は、幸福を得る方法を私より知っているみたい。」と少女は言った。「得るだけで対価を払う必要のない人生に何の価値があるの?最も価値のないものは、誰も必要としないもの。もしかしたら、私自身が余計な存在なのかもしれない。」
「それは違う…君は存在すべきなんだ。 少なくとも僕にとってはそうだ。」
「なら、あなたは私から何を得たいの?もしあなたのためにできることがあれば…」若者は、困ったような顔をした。
少女は大いに失望し、魔法使いが隠れ住む残響の森に行き、恐ろしい呪いを解く方法を探そうとした。
一方、若者は魔法使いから借りてきた魔鏡を取り出し、少女を止めようとする。「魔法がもたらした幸運が、 君のもとから離れてしまったら…」
そして、少女は可能性を示す鏡の中で、幸運が衰えた後の光景を目にしたすべての財産を瞬く間に失い、彼女に傷つけられた人々はもはや彼女を笑って許すことはなく、その代わり罵声を浴びせ、白い目を向けて、誰も彼女に近づかなくなった。それはまるでダンスパーティーが終わったあとのようだった。彼女が以前のように旅をして回っても、誰からも関心や気遣いを受けることはない。風雨で転んで、子供たちに笑われる光景も目にした。かつて彼女が手にしたすべてのプレゼントは、いま十倍、百倍にして返さなければならない。
彼女はそこから一歩も動かない。鏡の中で見た様々な出来事がすでに自分の身に起こっており、 人生が苦役の連続で、押しつぶそうとしているかのように感じた。
「幸いだったね、 魔法がもたらした幸運はまだ君を見捨てていない。 この世に君の軟弱さをあざ笑う人はいないよ。」

「そうだとしても、 私はより困難な道を選ぶ。 」
あの遠い日の冬の夜のように、彼女は母親の懐でうとうとしながら――今ではほとんど忘れてしまったが――いくら聞いても飽きなかった物語に耳を傾けていた。 物語の主人公たちはいつも幾多の苦難を乗り越えて旅の終点へと辿り着くことができ、旅の途中で払った代償や失ったものは、そう簡単には手に入らない報償をより貴重なものにした。
「私は鏡の中で人々が私のことを愛さなくなり、嫌悪する姿を見た。もう一度彼らが笑ってくれるようになるだけでも、これまで想像してこなかった苦労を伴う…でも、それが本当の世界。 変化に満ちて捉えどころのない世界。」
「違う、それではダメなんだ!君は必ず魔法がもたらす幸運に幸せを感じなきゃならない。でないと…」
「何を心配しているの? 仮にあなたが他の人と同じように、魔法の力が消えたあと私を愛さなくなっても、私はあなたたちを愛し続ける。物語の中の主人公みたいにこの自由な世界にいるすべての人たちに本心で接するわ…あなたが受け入れてくれる限り、私の心もあなたのものよ!」
鐘の音も他の予兆もなかったが、 魔法使いの言っていた約束の時間になったようだ。
「道理から言えば、 彼女が鏡の示す旅を終えてから現れるはずだったんだが、 まだ少し早かったようだ…まぁ、 魔法使いはいつも身勝手だからな。」
魔法使いは約束どおり、 若者が支配できる物の中から彼女が一番欲するものを取っていった
「願いは叶ったけれど、僕はすべてを失ってしまった…」
「彼女は素晴らしい登場人物だったよ、 別の物語の中でもね。 」魔法使いはゆらゆらとインク壺を揺らし、少女はそれ以来、その中に囚われてしまった。
「でも、彼女は僕のために存在する少女だ。ちょうど僕がそうであるように…もし彼女が解放されない運命にあるのなら、彼女を探しに行かせてほしい。 僕は瓶の中に無数の宇宙や物語を見てきた。もしかしたらその中に、僕たち二人を許してくれる世界があるかもしれないし、僕も素晴らしい登場人物になれるかもしれない…」

若者も少女もすべてを失ってしまいましたとさ。


  1. 400年以上前のサーンドル河で活動した魔術師。のちのジェイコブの養父であり当時記者であるカール・インゴルドをポワソン町の包囲から助けた。マルフィサとの決闘裁判により命を落とす。(「始まりの大魔術」、「裁判の刻」など) ↩︎
  2. エドワルド・ベイカーというジェイコブの実父(サーンドルの渡し守↩︎
  3. ここに限らないのですが、古代フォンテーヌの文脈では「水」=人、「土」=土地を指します(「抜粋」ほか) ↩︎
  4. 古代フランス北西部にあった地方でローマ帝国の支配下にあった。 ↩︎
  5. おそらく「黄金」ハンターのカッシオドルのこと。のちにファントムハンターという職名の由来になる(「狩人の胸花」) ↩︎
ManQ

原神も3年目となり新しい楽しみ方を探すべくブログを始める。
ストーリーのテキストをじっくり拾って読むのにはまってます。
神話は詳しくないので頑張って調べてます。

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