精霊の「罪」とレムスの「罪」

原神

この記事ではざっくり言うと「罪」をめぐる話です。精霊と純水騎士の罪に始まり、水国の旧主の罪、そしてレムス王の罪について考えます。特に、

① 精霊と純水騎士の話
② 精霊の「罪」とは何なのか?
③ 「水国の先主」は一体何者なのか?
④ レムス王の「罪」とは?

書籍・天賦テキスト・地理誌のほか魔神任務4章3幕、ヌヴィレットの伝説任務などのネタバレに注意してください。

レムリア史を整理してあるので参考になるかと思います。かなり長いので気になったところを拾ってよんでいただければと思います。この記事では特に水国の先主の罪、イーコール(魔像)の重要性、そしてレムス王の罪について検討します。

精霊と騎士の救済の旅

物語の始まりはルキナの泉になります。

「古い歌の中で、純水を訪ねる騎士はここで精霊と出会い、共に救済の旅に出た。千年の歳月は移り変わり、笑顔も涙も、喜びも苦しみも、最終的には夢のような旋舞となり、騒がしい喝采に消えた。」

「伝説によると、最初の純水騎士は精霊と共に荒野に隠れ、自己追放と苦行によって罪を償おうとしていた。今やこの地は既に死の静寂に帰り、冷たい風だけが、今もなお幽谷に吹き続けている」(罪禍の終末)

ルキナの泉は精霊と騎士の出会いの地でした。今は噴水が整備された観光スポットになっていますが、その前は泉(ないし湖)があったと考えられます。この場所にエピクレシス歌劇場を作ったのがフリーナでした。

救済」の前提には「罪」とそれによってもたらされた「苦難」があります。では、その精霊の「罪」と「苦難」とは何でしょうか?これを考えるに当たっては、精霊と純水騎士の時代、すなわちレムリアの時代を見ていく必要があります。

レムリアの興亡

※ここは断片的な情報を組み合わせたので別の解釈もあり得ると思います。

レムリアの始まり

レムリアの歴史はレムス王がフォンテーヌに降り立ったことから始まります。レムスは海上に自分の国を建てました。

「偉大なレムス王が金色のフォルトゥナ号に乗ってメロピスに降り立ち、文明と秩序を再びフォンテーヌの地にもたらした。彼は人々に耕作の技術を教え、土地を耕地に変え、巨石で神殿と都市を築き、人々が住めるようにした。」

魔神任務では「帝国の統治下に入るように呼び掛けた」といっていましたが、実際は武力を用いた強迫であり、「黄金の秩序」に入らない種族は征服されていきました。

この征服が順調に行ったかというとそうでもなく、特に深海の龍族(毒龍スキュラ)については手を焼いたようです(「黄金の飛鳥の落羽」ほか)。海の上と海の下の戦いだったので分が悪かったと考えられます。そこでレムスは、龍の国から帰ってきた後に不朽なる石とイーコールから黒い鉄のように固い種族を作り上げます。これが魔像と呼ばれる存在でした。

このイーコールは、水国の先主が授けた「一杯の水」に由来するものでした。

イーコールと魔像

イーコール(イコル)とは、ギリシア神話において神々の体内に流れていると信じられていた霊液です。ここでは魔像の血液というニュアンスで使われています。

「伝説によると、最初の僭主が原始の海に来た時、水国の先主は彼に一杯の水を与えたという。その後、彼は独断の新王となり、その水から不思議なイーコールを精製し、強くて輝かしい帝国を築いた」

水国の先主がどういう意図で「一杯の水」を与えたのか不明ですが、レムス王が求めていたのは「永遠の命と無限の知恵」でした。それゆえ、この水には永遠の命などない、すなわち、「一つに溶け合う終末」というメッセージが込められていたものと考えられます。

※別の箇所で「たとえ原始の胎海でも、それを全部溶かすことはできない」「純水に溶けない」などの記述があるので、この水自体にあらゆるものを溶かす能力があったと考えられます。

この意図をきちんと読み取ったのかどうかわかりませんが、レムスは「一杯の水」に溶けないものは何かを探していきます。その過程で偶然出来上がったのが黒く染まったイーコールでした。おそらくこれが魔像の原料となったイーコールだと考えられます。レムスはこの魔像を用いて戦いをするようになります。

※ほかに「黄金のイーコール」がありますが、それはまた別の話だと考えられます。これはボエティウスが帝国が滅びゆく中で盗んだもので、おそらく「金色の劇団」につながってくる話だと思います。ボエティウスは王とは違う方法で原始の胎海でも溶けないような人間の無限の可能性を信じていました。ルネはこの集団に興味を示しました。

レムリアによる征服

レムスは島々を制圧していきます。王は人間を「万物の主人」である自覚を持たせました。ここでいう「人間」はレムリア人のことで、それ以外の時代遅れの人間は『昔日の人』と呼ばれていました。他の種族をまとめて野蛮、蛮族と呼ぶこともありました。

「そして何よりも重要なことに、…、人間を他の生物から切り離し、万物の主人であるという自覚を持たせた。

レムスはレムリア人以外の野蛮、蛮族を帝国の不協和音として扱います。この過程で征服されたのが龍族純水精霊でした。これが精霊と騎士にもたらされた「苦難」だと考えられます。

「これは純水騎士がまだいた頃の遺物——騎士たちはこう言った。誰も訪れない山を流れる水に、忠実な精霊がいて、穢されない純粋なの泉(原文ママ)を守っていたと…しかし、イーコールを作った人間の主は、偉大な楽章と調和しない一切の不協和音を許さなかった。噂によると、調律師のボエティウスが行きつく場所に、甘露は埋め立てられ、帝国の橋は築かれ、純水精霊は跡形もなく消えていったようだ…」(純聖な雫の甘泉)

こうしてレムス王は帝国の統治を固めました。帝国の「不協和音」はなくなり、以後、王の楽章のもと繁栄を謳歌します。

「その後、レムス王とその不朽の艦隊は高海の全ての島を征服した。深海の巨竜までもが王に臣従した。」

帝国の自壊

しかし、こうした帝国は急に終わりを告げます。帝国は自壊し、純水騎士の戦いはここで終わりました

「黄金のベールが国土を覆い尽くした時代、純粋な泉水は山々に隠されなければならなかった。純水騎士はこれらの避難所で生まれた。騎士たちはシルバーの甲冑に誓った。純水の精霊を守り、唯一の源を信じている故郷の人々を守り、太陽をも覆う黄金の政権に抗うと。あれは遥か昔の伝説…帝国が崩壊して沈没したしばらく後、僭主に抗う騎士たちは甲冑を脱いだ。彼らの物語も、複雑で膨大な物語の歌に消えていた。」(無垢な海の銀盃)

それから「女王」によってフォンテーヌが建国されました。「高海の人々が再び野蛮と壊滅の沼に沈もうとしたとき、我らの気高い女王が諸族間の争いを収めた」とあるように、レムリアとフォンテーヌには連続性があると考えられます

「金色の劇団」が残っているように前文明の生き残りはいました。建築をみても、前文明の遺構を活用していたところが多々あります。例えば水仙十字院がそうです。

「願わくば、栄光が我らの高貴な先導者、川と海の君主、諸水域の女王に帰せんことを。願わくば女王が法を守り、とこしえに統治せんことを。願わくば平穏がフォンテーヌ全域に、満天下の万民に帰せんことを。帝都が転覆し、権威が失墜し、高海の人々が再び野蛮と壊滅の沼に沈もうとしたとき、我らの気高い女王が諸族間の争いを収めたのである。人々は湧き出る泉を取り囲むように新しい都市国家を建て、法律による統治を始め、今日に至っている。

ここでいう「法律による統治」というのは、人々の間の規律は法律に基づいて行われるというものであって、女王はその適用対象の外にいたと考えられます。

精霊の「苦難」と「罪」

以上のように「苦難」とは、帝国によって純水精霊が迫害されていったことだと考えられます。純水騎士は精霊を守る為に戦いました。

そして、精霊と騎士の「罪」として考えられるのが「水国の先主」が「一杯の水」をレムスに与えてしまったことだと考えられます。これをきっかけにレムスは魔像を作り上げ、純水精霊、龍族、そしてレムリア人以外の人々が迫害の憂き目にあいました。後で詳しく書きますが、この「水国の先主」はエゲリア、そして純水精霊と関係があったと考えられます。

※純水騎士の元ネタは「円卓の騎士」だと思います。ほかにもアーサー王伝説に関係しているものは例えば湖の乙女(The Lady of the Lake)なんかも出てきたりします。根拠が薄かったのですが、4.1の追加で次のような記述が追加されtました。

この喜劇『大蛇と純水の杯』はMonty Python and the Holy Grail(1975)から採ったものと考えられます。アーサー王伝説のパロディ作品です。ただ、これによって純水騎士の「罪」が不倫であるということにはなりません。おまけですが、アルコフリバス(Alcofribas)はラブレーの筆名「Alcofribas Nasier」からだと考えられます。

次に問題となるのが、この「水国の先主」が一体誰なのか?それが「精霊」とどのような関係にあるのかです。

水国の先主とエゲリア

水国の先主については「伝説によると、最初の僭主原始の海に来た時、水国の先主は彼に一杯の水を与えたという」との記述しかありません。ここを膨らませて考えていく必要があります。

ここでいう最初の僭主はレムスで、水国の先主は原始の海にいた存在だと考えられます。

エゲリア

「純水精霊はフォンテーヌの大地が育んだ美しい聖霊である。慈愛に満ちたエゲリア様が最初に流した一滴の涙から誕生したという。エゲリア様は龍たちを憐れんだとも、人類を待ち受ける運命を悲しんだともいわれている。」

それまでの情報だとエゲリアが水神であろうことはわかっていたのですが、ようやく前水神であることを明言してくれました。

エゲリアの最期は「原初の水」を残したことでした。この「原初の水」というのは、「水仙の一瞬一瞬」にも出てきます(不思議な本のページ9も参照)。つまり、エゲリアは、原初の水から誕生した魔神であったと考えられます。

ソルシュ:霊光の尊主――神鳥「シームルグ」は神様が残した原初の水を飲み込み、自らを「霊光」百種に変え、大地に撒いたノ。

ここが悩ましいところです。

純水精霊がエゲリア様やそれ以前のレムリアに先んじて誕生したという物証や記録がある」というようにたしかにエゲリアの時代とレムリアより前の時代は間があります。

また、エゲリアは原始胎海と今の水系を分断しました。これはエゲリアが原始胎海の管理者としてコントロールする完全な権限がないこと、あるいは、原始胎海がコントロール不能に陥ったことを示しています。そうすると管理者が別にいた可能性があります。不完全ながらも原始胎海の水をコントロールする能力を見せたのはヌヴィレットでした。

※ここでは原始の海=原始胎海と考えてます

水国の先主はエゲリアと縁が深い人物(エゲリア本人、あるいはエゲリアを原初の水から作り出した人物)であると考えらえます。

※ここの「水国の先主」については原初の海の案内人という可能性も否定できません。「先主」とあるように水国を支配した次の人がレムスなのかもしれません。

イリヤ(エリニュス)?

そこで候補に挙がるのがイリヤです。イリヤ(伊黎耶)というのはエリニュスのことを指しています。エリニュス島(Erinnyes)は原文では伊黎耶岛となっています。ここで、エリニュスとエゲリアの別れは「悲劇」として描かれています。

クトロの書いたと思われる手帳(「乱雑に書かれたノート」)にもエリニュスの話が出てきます。クトロの境遇を考えると、エリニュスは真実を告げる者であったがそれが受け入れられることがなく悲劇に終わったものと考えられます。純水騎士は、既存の権力(科学院)に対する反抗を示していると考えられます。

※これについては最初の純水騎士の名前である可能性もあります。また、エゲリアの眷属の名前だったりするかもしれません。

ジンニーの誕生と純水精霊の誕生

フォンテーヌはスメールを彷彿させる場面があるということを以前書きましたがここも似たような感じです。

天空に見放された花の女主人(花神)は荒れ果てた72もの夜を流浪したと言われ、「踵は無情な砂利にこすられ、その傷口から清浄な泉が流れ出し、尽きぬせせらぎへと変わった。そして、その水の恵みによって緑の園圃が生まれ、夜のように青い睡蓮がその中から生まれた…」。これがその眷属であるジンニーの誕生でした。

純水精霊は「神々が怒りのあまり雷を落とし、女神の悲しみの涙で湖ができた」とあります。ジンニーは追放の悲しみから、純水精霊は神々の怒りへの悲しみからというように両方には類似性があります。

以上をまとめると、「水国の先主」は原始の海の管理者で、エゲリアと縁が深い人物ではないかということ。

次に問題となるのは、以後の物語でなぜ水国の先主が出て来ないのか?ということです。今度は水国の先主と接触した人物、すなわちレムスについて検討します。

レムス王の罪

話はレムリア滅亡の場面に戻ります。帝国滅亡の原因についてはあいまいな記述しかありません。「裏切者の罪」「一時の狂気のせいで、彼は我々全員を裏切った」「野心と裏切り」「神王の愚かな裏切り」。とにかく「裏切り」が強調されています。この裏切りとは何だったのかが問題となります。

これだけを見るとキングデシェレト(アフマル)を思い出します。「神王」は守護神くらいのニュアンスで固有名詞ではありませんが、アフマルも神王、愚かな神王などと呼ばれていました。

レムス王の「裏切り」

定められた運命

「しかし、定められた運命は神々でさえ変えられないものであり、運命の審判から逃れようと企むことがすでに重罪である。」

定められた運命とはフォルトゥナだと考えられます。フォルトゥナは「どれほど栄えた帝国でも徹底的な破滅を迎えるもの」「国家の盛衰や、文明が滅亡した後に新しい文明が生まれること」を指しています。ここでは、レムス王の滅びの運命を指しています。

※ブラヴェの部屋にあったルッジェロのノートにはフォルトゥナは「楽章の名前」と書いてあります。

ここの時系列はよくわかりませんが、レムスは権力に関心がなくなり、人間に譲ろうとしてしまいます。死に近づいた王がこのような考えに至るのは十分考えられることです。

神王が犯した数々の罪の中で最も罪深いものは、神だけが持てる権力を人間に譲ろうとしたことだ。力と権威を得た人間は堕落し、続いて暴動と反乱が起きた。」

レムス王の「裏切り」でまず考えられるのが人々と国の永遠を追求することを諦めたこと、つまり、運命を受け入れようとしたことです。これは確かに民に対する裏切りであると言えます。また、「神だけがもてる権力」を人に与えることは権力を与えてくれた神に対する裏切りであるとも言えます。

もう一つ考えられるのが、自分だけが永遠になろうとすること、原始の海に溶けない存在、すなわち原始の海の管理者になることだったと考えられます。

しかし、そんなことが可能か。そこで出てくるのが漆黒のアビスの力です。つまり、レムスはこの世界の法則を書き換えようとしたのではないかと考えられます。

※「管理者」という言葉は本編では使われていませんがここでは世界樹の管理権限をもつマハールッカデヴァータを意識して使っています。

帝国の滅亡

大地が一夜にして崩壊し、高く聳える塔や建物が根こそぎ倒れ、巨大な柱がもろとも天まで届くような大波に飲み込まれるまで。御道は崩れ、神殿は傾き、永遠の都とその住民、戦士、智者、高官たちは、かつて太陽のようにまばゆく輝いていた黄金の宮殿とともに、永遠に光の射さない深い淵の底に落ちていった。そこで人々はようやく、自分たちの目に見えていた永遠が、如何に愚かな妄想であったかに気がついた。」

これだけ読んでいるとジュラバドの最期を思い出しますね。ジュラバドはオルマズドに対するリルパァールの怨恨から3代で消滅した砂漠の都市国家です。リルパァールは漆黒のアビスの力を借りて、娘シリンとそのジンニーの欠片を利用して復讐を果たしました。

注目してもらいたいのはこの記述が現在の予言とは全く異なるところです。仮にこのまま原始胎海の水の水が溢れだし、海面の上昇が続き、人々が水に溶けてしまったとしても津波は発生しないし、また、レムリアが滅亡した時もその土地の住人が全滅したわけではありませんでした。つまり別の原因があったと考えられます。

津波の原因は色々考えられますが、現実でいうとプレート境界における地震などが考えられます。他には外部からの強烈な衝撃ということが考えられます。

一つは、隕石です。白亜紀の末期に飛来したようなレベルの隕石だとテイワットは滅亡していますが、隕石というと降臨者の可能性があります。テイワットには星にまつわる地名(星落としの谷)だったり、隕石に関する記録(層岩巨淵など)があります。

そして、もう一つがファンタジー的にいえば神々の怒り(神の裁き)です。テイワットでいうと断罪の釘です。

※この点について、キングデシェレトのときは釘が落とされていないではないかと思うかもしれませんが、それはマハールッカデヴァータが災厄を鎮めたためだと考えられます。

※hoyolabに投稿するに当たって加筆(10/16)

滅亡の原因

① 降臨者

一つは、隕石です。白亜紀の末期に飛来したようなレベルの隕石だとテイワットは滅亡していますが、隕石というと降臨者の可能性があります。テイワットには星にまつわる地名(星落としの谷)だったり、隕石に関する記録(層岩巨淵など)があります。

ただし、それなら降臨者はどこにいったのかという問題があります。

② 断罪の釘

そして、もう一つがファンタジー的にいえば神々の怒り(神の裁き)です。テイワットでいうと断罪の釘です。

まず「神だけが持てる権力を人間に譲ろうとした」という部分です。これは、神に権力を与えた神に対する裏切りであって、極端なことをいうと「法則」に関わりかねないものです。

そして、レムスは永遠を求めて原始の海のの地位を奪おうとして神の裁きを受けたうことも考えられます。レムスは純水に溶けないもの、すなわち、「永遠」を求めていました。

しかし、このようなことが可能か?そこで出てくるのが漆黒のアビスの力です。レムスはこの世界の法則を書き換えようとしたのではないか。

※「管理者」という言葉は本編では使われていませんがここでは世界樹の管理者をイメージしています。

ただし、「驚きと後悔の中、王は最も忠実な衛士と調律師を招集し、分裂しようとする領土に再び平和を取り戻そうと、最後の命令を下した…」という記述に合わない部分があります。

③ 龍族の反乱

レムスの罪の一つに「神だけが持てる権力を人間に譲ろうとした」というものがあります。これにより、レムリアの統治が弛緩したと考えられます。そこで、海淵の下の龍族が反乱を起こし、津波を引き起こした。

「海淵の下の巨竜までもが王に臣従した」とあるように一度はレムリアの下に入ったようです。しかし、毒龍スキュラが帝国の楽師を殺害し、それが原因で龍族の殲滅を検討しているような記述もあります。そして、滅亡の場面でも「魔龍親王の蛮族の大群」であったり、悪龍の封印ということが出てきます。

「魔龍親王の蛮族の大群も、自身の力を尽くして帝国を救おうと決意した神王も、制御できない嵐に巻き込まれた」

「神王の愚かな裏切りに驚き、楽師は最後の衛兵を招集し、溶けないイーコールで悪龍を高塔の下に封印した後、王に海底に沈んだ」

ただし、このレベルの津波を起こせるのならば初めから臣従しないのではという疑問があります。

④ 大波はただの脚色

大昔の歴史書にあるようにただの脚色にすぎない。面白くないですがこの可能性も否定できません。

私は②の筋で長々と記事を書いていたのですが、どうやら③の可能性も否定できないと感じました。ただそうすると、レムスの罪は「他種族を殺害した」「神だけが持てる権力を人間に譲ろうとした」ということに尽きることになってしまいます。それならば原始の海はどうして今のようになってしまったのか、エゲリアはなぜ蓋をして秘密にせざるをえなかったのかがうまく説明できません。

また、フォンテーヌ人の罪の範囲を先史時代に拡大してしまうと「人類」全体の罪になってしまいます。そうするとレムリア~エゲリアの治世までに「法則」に抵触するような罪をどこかで犯したのではないかと考えました。「願わくば女王が法を守り、とこしえに統治せんことを」という記述でも、建国者である女王が「法」を守ることが強調されています。

レムスの罪の結末

端的に説明するとフォンテーヌ人の罪、原始の海の管理者の喪失、原始の海の変化、地形の変化です。あとは断片的に水の管理をどうするか?についても触れています。

エゲリア:「原罪こそ最も公正であり、沈まぬ者はいない。最後の歓宴を急ぐことね。罪人(ざいにん)は今にも幕を閉じるわ」

原罪というのはある宗教に特有の概念で、信仰との関係でとても重要なものです。なぜなら罪がなければ救済もないし、救済の必要性がないならそもそも信仰の必要がなくなるからです。つまり、罪―救済―信仰は一体となっています。人がどうして罪を負っているのかについては古来様々な論じ方がされてきました。

ここで強調したいのは原罪とは本人の意思とは関係なく負っているものということです。そうすると原罪がアダムとイブに求められるように、フォンテーヌ人、つまり、フォンテーヌ地域に居住していた住人の過去に原罪を求められるのが妥当だと考えました。先史時代までさかのぼってしまうと人類全体の罪となってしまうのでフォンテーヌ人の罪とはかみ合わなくなってしまいます。

そこで候補となるのが先ほどのレムス王、すなわち「人」の国の王の罪でした。

管理者の喪失?

フォンテーヌ、特にエリニュス島のあたりには不穏な情報がいっぱいあります。

エリニュス(Erinnyes)という復讐の女神という名前(ただし中国語原文にはないのであくまで参考程度)。

エリニュスとエゲリアの別れという「悲劇」

ルキナの泉に書かれている文言。これはレムリアにおいて精霊の泉が埋め立てられたことを反映しているものと考えられます。
“may no spring no fountain ever run dry”:「泉や水源が決して涸れることのないように」
“may the torrent of life wash the valley grey”:「生命の激流が、灰色の谷を洗い流してくれるように
“the mountain high into the end time nigh”:「高き山も終わりの時が近づく中で」

エリニュス島の奥にも秘密があるとされます。これはメロピデ要塞のような原始胎海の水への入り口が他にもあるのでそれを指しているのかもしれません

律償混合エネルギー(英文はIndemnitium>indemnity(補償))という語、つまり「償い」です。「正義」に対する信仰がなぜ償いになるのか疑問に思うところです。Atonementが宗教的な文脈で使われるのに対し、indemnityは法的な文脈で使われるイメージです。

フリーナは時計が好きなようで時計の博覧会に行ったりしています。そしてカロンの作品に「湖女の涙」という名前を付けました。予言にもが出てくるので何か関係があると思います。ルキナの泉はフリーナの涙を集めています(フリーナ・不休のソリスト)。涙は悲しみの感情や呪いと関係があります。

PV「足跡」:正義の神は法廷の茶番の一切を愛し、神々への審判さえも求めた。されどそんな彼女も知っている。「天理」を敵に回してはならないことを。
これは過去に何か天理との間にトラブルがあったことを匂わせています。

執行されてない死刑。ヴァシェは常識的に考えたらフォンテーヌ初の死刑になってもおかしくない犯罪者ですがそのことについて特に触れられませんでした。特巡隊のヴォートランも旧勢力に対して敵討ちをしたようですが死刑にはなりませんでした。それならば死刑たり得る罪はなにか?

例えば日本の刑法だと刑の重さはそれによって守られる法益(保護法益)との関係で決まってきます。例えば個人の生命・財産(殺人罪、強盗罪)、社会の安全(放火罪など)、国家の存立(内乱罪、外患誘致罪)のような感じです。

これをフォンテーヌでいうと国家の存立とは神の存立を意味します。つまり、過去に何かあったのではないかとも考えられます(ただし現実では法律の存在=過去の事例の存在を意味しません)。

ギロチンのような構造物もこれは何らかの死を匂わせています。

断片的な情報を並べました。上ではレムスの罪は原始の海の管理者の地位を奪おうとしたことにあると書きましたが、もっというと管理者を殺してしまったのではないか。その結果、原始の海の変化が起きてしまった。フリーナの「呪い」もここに関係ありそうです。

地形と水脈の変化

神は地形を変えることができます。例えば風神はとんがり帽子山を吹き飛ばし、その山頂が今のマスク礁になっています。岩神は孤雲閣、雷神は夢想刃狭間、そして草神は防砂壁。フォンテーヌの地塊の上昇(数千メートルに及ぶ滝の存在)には何か物語があるようですがまだ語られていません(レムスが船でメロピスに来たようにそこまで高くなかった?)。

原始の海と現在の水系には明らかな断絶があります。これは水神(ないし水龍)が原因だと考えられます。無理矢理蓋をして閉じ込めているように、かつてはフォンテーヌの水と繋がりがあったと考えられます。

ルキナの泉は「フォンテーヌの全ての水脈が集まる場所」とされています。なぜこの場所にあるのかというとそれは今の水系はルキナの泉を中心にエゲリアが再生したからだと考えられます。大陸の水系は純水精霊を通じて維持されています。

しかし、これには限界があると考えられます。なぜなら新しい純水精霊は誕生しないからです。そこで力になれるのがヌヴィレットです。

魔神任務では、あくまで最終手段ですが神が消失すれば元素を操る権能が返還されることが示唆されています(ヌヴィレットのセリフにも「完全なる龍」に関する話があります)。フリーナの腹案とはこのことなのではないかと考えられます。龍が完全に力を取り戻せば、原始胎海の水の問題も解決します。

人の時代

フォンテーヌでは審判にフリーナがいますが、彼女が審判しているわけではありません。最終的に裁きを下すのは諭旨裁定カーディナルでした。つまり、神の作った道具による裁き=神の裁きであったと言えます。また、人が神の裁きを受けることはない、つまり罪(原罪)はないという意味もあると思います。

そして最後の文は、神も法の下に入る、すなわち、法の支配の貫徹を意味していると考えられます。フォンテーヌが建国された「女王」の時代は法は人と人の間を規律するものであって神はその外にいたと考えられます。

これは神と人間の関係の変化を意味していると考えられます。鍾離が言っていたように七神の役目は「人類を導く」ことにあります。傾向としては人間の自立が進んでいるように感じます。

スメールは神の心を失ったことでアーカーシャを失いました。フォンテーヌも同じように神の心を失うことで諭旨裁定カーディナルを失い、新たな局面を迎えるのではないかと思います。

(補足)濁水幻霊

ルネの表向きの研究が土地と水域の汚染に関する研究だったようです。「奇形の水元素精霊」とあるように、濁水幻霊はこの時代にすでにいました。

災いが起きてから現れたこの元素生物は、かつての純水精霊のような優美さを備えていないため、「濁水」と呼ばれている。水中に溶けた毒は既に希釈・浄化されているが、どこかに純粋な水の容れ物がない限り、フォンテーヌの水中に再び純水精霊が自然に誕生することはない。」

一方で、ルネも同様に水域の汚染は浄化されて、ほぼ希釈されたとされて言っています。

この点から考えると、水面上昇はエリナスによる水質汚染とは無関係だと考えらます。例えばエリナスによる汚染を希釈するために水が増加しつつあるという話ではなさそうです。

一方で、科学院も水質調査を続けており、水質汚染への関心は高いので、別の原因により水が汚染されている可能性も考えられます。

補足2 エゲリアが出てくる資料について

PV「フィナーレへの歓宴」エゲリアの名前初出
古い博物誌の記録エゲリアが純水精霊の産みの親の一つであることが語られる
濁水幻霊エゲリアの時代、純水精霊はよく人と連れ立って、各地の澄んだ泉に散らばり、世界の水脈を結びつけたことがあったという」
地名ベリル山地エゲリアの信者たちは宴の地と考え、愛と夢を詠んだ
任務4章2幕「予言」を残したのは前水神である
4章4幕「前水神エゲリア」と明言
彼女の残した秘密がメロピデ要塞の禁域に原始胎海があるということ。
善悪のクヴァレナ万種母樹と花霊の成り立ちにおける水神の関与について語られる
イベ純水の願い大陸の水系を維持するために前の水上スパイを各国に送り込む
聖遺物花海甘露「水の国の旧主」「甘露の主」
イディア前水神が亡くなったことに言及

おわりに

二つの「罪」

フォンテーヌ人の罪はフォンテーヌ人の過去に求めるべきではないかと考え、歴史を遡って考えてみました。

エゲリアは原始胎海の水に蓋をすることを選びました。つまり、彼女一人の力ではどうにもならない事態が生じてしまったのだと考えられます。原始の海の管理に必要なものは何なのかについてはこれから語られることでしょう。彼女の死後にここにたどり着いた学者がいましたがそれは別の話。

一番悩ましかったのが「水国の先主」とエゲリアの関係です。最初は同一ではないかと考えたのですが、原始の海のコントロールを考えた際に腑に落ちない部分がありました。そして、イリヤに関する話も出てきました。そうすると別の存在という結論もあり得るのではと思って記事にしてみました。

ただ、イコールであったとしても神の死という部分がなくなるだけで、全体の結論にはそこまで影響がありません。「水国の先主」の罪は「一杯の水」をレムスに与えてしまったこと、レムスの罪は法則を塗り替えようとしたことになります。

ウーシアとプネウマの分裂

最初に考えた物語はこうでした。水国の先主の死によって頭はプネウマに、身体はウーシアに分かれた。前者は精霊に、後者は純水騎士の始まりとなった。だからルキナの泉は出会いの地であると同時に別れの地であったという感じです(サムネはその名残)。剣のようなものを持つ神像で甲冑を脱いだ騎士を連想しました。結局のところそれ以上の根拠は見つかりませんでした。

4章4幕を踏まえると別の考えも生まれました。ヌヴィレットは水の龍王なのになぜかプネウマしか使えません。これはヌヴィレットの「元素を操る権能」が不完全であることを示しているとも言えます(ウーシアが足りない)。ただし、神像を通じて水元素力を使えるようになる旅人もプネウマで「源水の雫」を出すことができるので、奪われた龍の力=ウーシアとはならないと思います。

リネとリネットも双子で違いますし、ゲーム上の都合で色分けされた感じが否めません。


ルネとアランの記事で魔像が大事だという話を書きましたがここでも書ききれませんでした。レムリアにはまだ重要な事柄が隠されています。機会があればまた書きたいと思います。

レムリアについてはまだ掘り下げがあるでしょうし、この記事まだ時期尚早な感じがしますが、今の材料で推測できるところまでを書いてみました。

この記事で検討したかったのは水国の先主の罪、イーコール(魔像)の重要性、そしてレムス王の罪です。レムリアの滅亡が今のフォンテーヌの水系に少なからず影響をあたえたのではないかと思います。

(おわり)

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