また新しい単語か…と思いきや意外と既存の情報を整理すればそれなりに計画が見えてくるような気がしました。
※召使の伝説任務とタルタリヤ・放浪者・召使のプロフィールのネタバレがあるので注意してください。
厳冬計画とは?
まずは本編に出てきた情報を整理します。
厳冬計画
厳冬計画(Project Stuzha)。Stuzha(Стужа)はロシア語で厳しい寒さのことをいう。召使の伝説任務で3回ほど話題になります。
1 計画にはタルタリヤも参加する
公子:でも、今度こそ本当にお別れだ。爺さん(雄鶏)から催促が来たんだ。帰って計画に参加しろってね…
召使:「厳冬計画」?
公子:そうだ。はぁ、それから「富者」のことも。帰ってあいつの長話なんて聞きたくないよ。
召使:…。まあ――私も直にここを離れる。我々もその計画の一部なのでね。それに、スネージナヤに残っている富豪や要人に呼びつけられるというのも、一種の「栄誉」なんじゃないのか?
2 計画には「ブーフドエテの館」も参加する
リネ:ごめん…僕も詳細は知らないんだ。ファトゥスの「雄鶏」と「富者」が手を組んで推し進めている計画で、ファデュイのこれからの戦略に関わってるってことだけ、「お父様」から聞いた。神の心を無事に手に入れたおかげで炉壁の家は認められて、「厳冬計画」でとても重要な仕事を割り振られた。
リネ:「重要」というのは「危険」に等しい。僕たちにとってはかなり困った事態なんだ。「お父様」も相当悩まされてるけど、それでも断れない。彼らの計画は合理的だし、僕たちに巨額の経費を与えた。でも…この計画を実行するとなると、こちらは多くの犠牲を払うことになる。これもある意味「制圧」なんだろう。彼らは情報を扱う部署をコントロールできないことに不安を感じているんだ。
3 (一部の)富豪や政治要員たちが計画を妨害している
リネ:「お父様」からの恩は必ず返します。それに「厳冬計画」がもうすぐ始まります。家に様々な危険が迫っている時期に、決して逃げたりしません。…これが僕の「信念」です。
召使:分かった。厳冬計画については、あまり心配する必要はない。富豪や政治要員たちがこちらの命を狙っているようだが、しっかりとお灸を据えてやろう。
かなりふわっとした話しかしていません。
これらから分かるのは複数の執行官が関わる計画で、その実行には多くの犠牲を払うものである。そして、一部の富豪や政治要員が反対しているということです。
この内容を考えるにあたっては、まずその計画を積極的に進めている執行官「雄鶏」と「富者」について知る必要があります。
雄鶏について
「雄鶏」はスネージナヤの市長ということが分かっています。私の中ではキャラクター紹介のイメージが強いです。
タルタリヤは彼のことを「爺さん」と呼び、雄鶏が兄妹の面倒を見てくれていると思っているため感謝しています。
一方で、放浪者と召使は「雄鶏」の善意にはウラがあるということをほのめかしています。
俺は義理や人情といったものがよく分からない。けど、彼が本当に俺のことを助けたいと思っているのは知っている。俺を見る時の彼の眼差しは、まるで家族を見るもののようだよ。ああ、そういえば、トーニャとテウセルからの手紙には、彼がうちに送ってくれたパイやプレゼントのことが書いてある。どうやら、俺が冬国を離れている間、彼は約束通り、俺の家族の面倒をよく見てくれているみたいだ。 | |
「公子」くらいだろうね、「雄鶏」が誠心誠意、見返りもなく彼とその家族を気にかけてくれてるなんて思うのは。あの市長様は確かに実のあることを多くしてきたけど、ちょっとでも頭のいいやつなら分かるはずだよ。それが意味することは——「君の家族を握ってるぞ」、でしょ? | |
「雄鶏」は私をあまり好きではないし、私も彼にいい印象など持っていない。市長としては合格…いや、「優秀」と言ってもいいだろう。最小の代価で莫大な利益を得るその手腕は、お偉方の間でも好評を博しているらしい。ただ、その「最小の代価」として、度々壁炉の家をちらつかせることは残念でならない…遅かれ早かれ…フン。 |
正直、彼は執行官に向いていないと思う。いつも他人の意図を善意として解釈し、人に利用されることもしばしばだ…無論、天賦の才に恵まれているということは確かだし、今なお成長し続けてもいる。彼に対する評価を急ぐ必要はないだろう。(「公子」について)
「雄鶏」はストーリーではまだあまり出て来ていませんが、層岩巨淵のファデュイの責任者でもありました。層岩巨淵は地下ですね。
※本編では「責任者」という言葉は使われていませんが、ファデュイは一人の執行官の下で動いていることが多いためこのように書いています。
雄鶏の直属の部下である第九中隊「代理隊長」のアントンも次のように発言しています。
アントン:より有意義な冒険にするために、「雄鶏」様は自ずと価値の低い資産を切り捨てる。それが「雄鶏」様の理性だ。
市長には総合的な能力が求められます。別の市や議会とも円滑なコミュニケーションを取れないといけませんし、市民の多様な意見も汲む必要があります。今を生きている人間だけでなく将来その土地に暮らす人間のことも視野にいれなければなりません。
大事なのが情に流され過ぎてもだめだということです。時には冷酷な判断も必要になります。召使はそうした雄鶏を市長として「優秀」だと評価しています。冷静かつ冷酷な判断ができる人物、それが「雄鶏」だと考えられます。
富者について
富者については「停頓の時」というテキストに出てきます。
人の運命は人が握るべきであるように、金銭についても「神」の手ではなく人の手に握られるべきだという考えを持っています。
金銭が流通する軌跡は、世界の静脈を構成する。
ならば世界の中心とは、黄金の心臓とも言えよう。
認められることのない彼は、俗世の力を追求するしかない。
しかし、「彼ら」にとってなんの意味もない金銭も、
無数にある権能の一つとして、「神」の手中に収まっている。
もしかすれば、彼がかつて貧しかったが故に、金銭に対して病的なまでに執着しているのかもしれない。
もしくは、神の支持を得られなかったが故に、対抗の意志を燃やした…
「金貨発祥の地の人々は、『契約』を重んじる。」
「金銭の名のもとに、『契約』を守ろう——」
「すべての手段を使い、世界を流通する金の心臓になる。」
「そして必要な時に、自らの意志でその心臓を止めるだけだ。」
「凛流の監視者」でも同じように人は金銭の「主」たるべきであると考えています。
メロピデ要塞の特別許可券は「富者」が実験として導入したものでした。どのような実験かというとモラに依存しない小型の経済圏が作れるかどうかというものでした。
よく刑務所でタバコが通貨の代わりになるような話がありますがあれと似たようなものだと思います。モラから独立した経済が可能かという実験です。
金銭の流通する道は、世界に勢いよく流れる血管を描き出す。
無数の生命がその血潮の中で浮き沈みし、やがて巻き込まれ、吞み込まれる。
当然、本来すべてが我々「人」の功績である。
まさに数字と数学が金勘定のために生まれたように、
文字は借用証を書くために存在し、法は所有者の変わる財を制約するためにある。
「人」は金銭の奴隷ではなく主たるべきで、
黄金の心臓は「人」の世界のために拍動するべきなのだ。
——当然、真に金銭を所有できる者はいない。
それは結局、我々「人」の手を経由して、
世界の片隅から時間の終結へと流れるにすぎない。
ゆえに最も理解し難いことと言えば、
いわゆる「世界の片隅」が選ばれ、制約を受けること。
ゆえに最も受け入れ難いことと言えば、
そもそも我々「人」に属するべき偉業が、
いわゆる「神」という代物に横奪され、制約されること。
それこそ我々が取って代わらねばならない理由。
金銭の心臓が異郷の「神」に奪われた以上、
彼らはしばらく人々を奴隷のように酷使することができる。
たとえ黄金の心の持ち主になることはできずとも、
すべての人に平等に金銭を掌握させるべきだ。
「こう言うと想像しにくいかもしれないな。腹案を披露させてほしい。」
「まずは新しい貨幣を創り出し、モラへの依存を置き換える。」
「場所となると。世間と断絶した小型の経済圏。」
「目星を付けている場所がある。神の力の及ばない、国の中の国だ。」
「浸透させるのにそれほど時間はかからないだろう。」
「名前をどうしようか…命名するのは本当に嫌いなんだ。そうだ、こうしよう。」
「実験を許可していただけたことを記念して、『特別許可券』と呼ぼう。」
製造した精密機械の監督者はブンブンと音を立て、ちっぽけな国の金の流れを観察している。
疲れを知ることなく、すべての金銭の動き、すべての人の貯蓄と浪費、
様々な価値の変動、特定期間内の貨幣毎の流通回数を記録する。
その間、唯一の法律は貯め込む者の私法で、唯一の制裁は貧しさか死だけだ。
あるいは利益を貪り権力を握る支配者となり、あるいは支配され死ぬまであくせく働く。ルールはいつも公平だ。
こうして人は、自身の持つ野心と財産を頼りに、神と肩を並べる。
そうした競争の中ですべてを失った弱者は、人の世の流れに吞み込まれる。
もはや神の力が介入し、貧者の目の前で富者の威勢を飾ることはない。
もはや神の財産がなだれ込み、富者の足元から貧者の尊厳を救うことはない。
他の執行官からは特に目立った評価はされていません。「壮大な計画」というのが2回出てきます。
ああ、「壮大な計画」ばかり考えているあの野心家のことか。彼の理論はまったくもって頭に入ってこないよ。とにかく、不測の事態に備えた資本が十分にあるならそれでいい。 | |
あの第九位のことか。彼は「公平な取引」にすごく固執していて、あまつさえ、神と人の間にあってしかるべき不公平さえ覆そうとしている。まあ、凡人はそういうものさ、非現実的な妄想を抱きやすいんだ。別に特別なことなんかじゃないよ、彼の平凡な能力や目利きと同じようにね。——ふんっ、「博士」と密接な協力をとるなんてね…いい結果にはならないさ。 | |
彼が優れた頭脳と手腕を併せ持つことは認めている。だが、「冷静さ」には欠けると私はみている。壮大な計画を立案し、無機質な経済を操る能力には長けているものの――彼を突き動かしているのは、依然として心の奥底に抑え込まれたままの憎しみと嫌悪だ。自らを理性的と言い張る者は、得てして己の感情をコントロールできていると思い込んでいるものだが…その自信こそが最大の弱点だと言える。 |
余談ですが富者というと夜蘭との因縁もあります。「幽奇なる腕輪」に関する話です。
これまでの情報屋人生において、夜蘭には失敗と成功を兼ね備えた、記憶に残すべき特殊な経験がある。
失敗は、その任務において、「幽奇の腕輪」と呼ばれる先祖代々の腕輪を失くしてしまったこと。
腕輪には一族の術法が刻まれており、簡単な情報伝達に使うことができた。しかしこういった小型法器は二つを一組として使う必要があり、一つしか残っていない今ではただの飾りでしかない。
成功は、相手が彼女から何も得られなかったこと。その相手は、決して小者ではなかった。現ファデュイ執行官第九位——「富者」。
「富者」が密かに敷いた貿易ルートは夜蘭の侵入を受け、貨物は足止めされた。その上、最も貴重な品が腕輪の代償と称し夜蘭に奪われてしまった。
——古く、その毛皮から作られたコートに多大な価値を持つ魔獣がいた。しかしそれはかなり希少な品で、市場には存在しなかった。
魔獣の力は強大であり、数百年前に死を迎えたにも関わらず、未だ遺骨や残骸は腐ることなく、毛皮も香り立つようであった。
女皇へ贈るはずだったそれが、夜蘭に横取りされてしまったのだ。
それだけでなく、スネージナヤの人々が陛下のために心を込めて厳選した様式までもが、夜蘭によって否定されてしまった。
彼女は獣の皮を剥ぐと、璃月の苧麻と組み合わせ、新しく袖付きの肩掛けを自作した。
大きいとも小さいとも言える一連の事件は、二文字で表すことができる——得失。
何かを得て、失う。何かを失い、得る。それはまるで、夜蘭の人生のようだ。
しかし彼女はそんなことは気にもせず、ただそれを楽しんでいた。
夜蘭の真の力が解放される日が来るのかもしれない…
「富者」は経済の血液である金が神の作り出したモラに依存していることが認められなかった。
彼を動かしているのは神によって支配された経済に対する「嫌悪と憎しみ」です。そして、小型の経済圏を作る実験をしていました。
彼はモラに代わる新たな経済秩序を作ろうとしていたと考えられます。
見えてくるもの
「雄鶏」は市長として人と人との利益調整をするのに長けています、そして層岩巨淵という危険な地下に部下を送り込む冷静さも有しています。
一方、「富者」は神が金銭を支配していることに憎しみを抱き、金銭を人の手に戻そうとしていました。その実験の一つがメロピデ要塞における特別許可券でした。つまり、経済における新しい秩序を模索しています。
新世界には新しい秩序が求められます。
厳冬計画は地下に新たな国家(避難所)を建設する事業だったのではないでしょうか。
原神ではよく神話の話が出てきますが、北欧神話には「フィンブルの冬」(Fimbulvetr)というのがあります。夏がなく、厳しい冬が3度続いてあらゆる生物に苦難をもたらす。この冬の時代の終わりには、ラグナロク(神々の黄昏)があり、ここに神の時代が終わります。
現実的な話をすると地上に比べると地下は地表と比べると温度が安定しています(光源と酸素の問題はとりあえず省きます)。
地下は人間界とアビス界の重なり合う領域であり、そこを開拓することはアビスとの衝突を避けられないと考えられます。これを踏まえてか「道化」は散兵に命じてアビスを探索させていました。
「道化」はカーンルイアの遺民さ——それ以外について、僕は彼をほとんど知らないし、彼と親しく交流したこともない。でも、彼は僕に対して何か考えがあったようで、前に重要な任務をいくつもくれた…「アビス」へ向かうことも含めてね。(「道化」について)
ファデュイとアビスの関係はあまり語られていませんが、タルタリヤはアビスを「我々の敵」だとはっきりといっています。
アビスとの衝突は必然的に「多くの犠牲」を伴うと考えられます。
余談ですが地下のトンネル工事は一度やってますからね!
この記事における結論は、新世界の到来に備えて地下に新たな国家を造る計画だと考えます。カーンルイアが地下に自分たちの国を造っていたように。
ナタでファデュイが神の心を手に入れると氷の女皇の下にすべての神の心がそろうことになります。つまり、最初に天理への挑戦権を獲得するのはファデュイだと考えられます。
天理と最初に戦うのはファデュイ、次は旅人。旅人はここでテイワットの「真相」を知り、テイワットを守る選択をする。それから最後にアビス(兄妹のもう一方)と戦うという妄想をしています。
旅人は兄(妹)がこういう選択を取ることを知りつつ、「真相」を知るために旅をさせた(逆の立場なら同じことをするでしょう)。
ラスボスに何か変な奴が現れて兄妹の共闘路線も面白そうですね。
補足:テイワットに季節はあるのか?
「冬」の話が出たのでテイワットに季節があるのかという話。季節感があまりないゲームですが料理などのテキストにはちゃんと四季の話が出てきます。
クレーも自分が夏の生まれであることを言っています。
(言語を変えてるとメールもそのままになってしまうので注意が必要…)
まとめ
「厳冬計画」とは女皇が主導する「新世界」(新国家)の建設事業であり、それは地下で始まると考えられます。
崇高な理念より既得権益を大事にする一部の富豪や政治要員はこれに反対しているのではないでしょうか。例えば今持っている富・土地を失ったり、選挙区が変わったりしますからね。
崇高な理念より現実の方が大事だという人がいるのは当然だと思います。
もう一つ考えたのは冬眠みたいなものですね。地下に避難所を作って冬が過ぎるのを待つ。ただアビスとどう折り合いをつけるのかは謎です。
情報が少ないのでまだまだ色々考えられそうです。これではないか?というものがあれば是非教えてください。
(おわり)
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