「瓶の国」の物語(ver3.8)

原神

お久しぶりです!

あまりこういう解説の記事は書かないのですがいいストーリーだったので記事を書きました。

「盗賊」と「魔女」の意味について考えました。

「涼夏!楽園?大秘境!(ver3.8)」ネタバレしかないので注意してください。書いてるうちに長くなってしまったのでで気が向いた時にゆっくり読んでください。

あらすじ

アリスは友人であるイディアを通じて、イディアの居所である「ヴェルーリヤ・ミラージュ」にクレーを招待しました。アリスはクレーに「瓶の国」のおとぎ話を語ったことがあり、その不思議な国の冒険を体験させてあげようという意図だったと考えられます。

イディアがクレーをもてなすはずでしたが、それより前にこの蜃境を訪れたレッシグがうっかり蜃境のコアに触れてしまったことで、「天と地がひっくり返った」ようなことが起こり、コアホイールが止まってしまいました。

問題を解決すべく、クレーは「瓶の国」の物語のロールをみんなに与えてパーツ集めに奔走して無事に蜃境のコアを修復しました。

アリスは今回の冒険を通じてクレーに「魔女」とは何であるのかを自分で考えてもらいたかったのだと思います。

大盗賊と瓶にまつわる物語

以下は、物語の内容を整理しました。

瓶にまつわる物語

① 短刀の大盗賊

「光なき国」の短刀の大盗賊は、暗闇に苦しむ人間を救えないかと考えていた。ある日、彼は流れ星を見つけ、その光を見つければ暗闇に苦しむ人々を救うことができると考えた。それで、彼は星を追うことにした。

太陽のない国というのは彼岸の表現だったりしますが、原神で光なき国とは「夜の国」(白姫と六人の小人)などと同じようにカーンルイアを彷彿させるものです。

② 大盗賊と少女の出会い

大盗賊は流れ星を追い、危険な砂漠の奥深くへ行き、白い服を着た少女に出会った。少女は「あなたが追い求めている光はただの、瓶の中の炎に過ぎません。しかし今、光は遠ざかっていきました」と言った。

③ 少女と炎のように赤い魔女の出会い

少女は滝の上の王国に住んでいたが、王朝が転覆して政権が変わり、彼女とその一族は散り散りになってしまった。少女は逃げる中で、いばらに覆われた密林で立ち往生した。そこに「炎のように赤い魔女」が現れ、いばらを燃やして助けてくれた。そして魔女は少女の境遇に同情し、持っていた瓶を渡します。

④ 瓶にまつわる物語

活発で旅をすることが好きな魔女は、三日月のような湖の岸辺で綺麗な瓶を拾った。魔女は人の願いを叶える魔女で、その瓶も願いを叶える瓶に変えた。「しかし、瓶が願いをかなえられるのは、瓶の中でだけ」。一方で、魔女は瓶の外でも一度だけ願いをかなえられるようにした。

少女は、「誰にも見つからない場所に行きたい」と願った。すると、誰も近寄ることのできない砂漠に送られ、瓶の中の炎は消えてしまった。

⑤ 大盗賊と少女のその後

大盗賊は瓶の中に光を出現させることを願った。それは、瓶の中のものではあったが、瓶のガラスを通して世界中のどこまでも届く光だったからだ。瓶を受け取った大盗賊は一緒に光のない国に帰り、そうして幸せに暮らした。

物語と事実の相違

この物語は、心海に出会ったことでヒロインのアイデアが浮かび、一気に書き上げたということになっています。ゾシモスがずっと書きたいと思っていた物語で、頭の部分だけしか書くことができなかった「盗賊」と「魔女」が出て来る物語です。

しかし、その内容は以後のストーリーの話に照らし合わせるとアリスとイディアの出会いをある程度反映していると考えられます。イディアはヴェルーリヤ・ミラージュに関してアリスに「恩」があると言っていたこと、滝の上の王国の話と純水精霊の類似性、瓶にまつわる話の類似性などが根拠として挙げられます。ただし、物語の中の物語ですからこれも物語の事実と異なることがあります。

事実と物語の関係

なぜ、このような一致があるのかは明言されていませんが、偶然の一致ゾシモスを構成する水形幻霊がイディアの影響を受けていたこと断片的にできていた物語を再構成した可能性などが考えられます。再構成については、ゾシモスの演劇に対するイディアの批評がヒントになります。

イディアはゾシモスの劇に対して、「何を描いているのか全然分からない」「意味が分からない」というかなり厳しいコメントをしています(この点について旅人が意外だという反応をしている)。

ゾシモスはこれについて「先成図」を本来の使い方で使っていないからだと考えました(先成図でモノを作るのではなく、先成図にモノを作っている)。もっとも、別の理由も考えられます。

この理由の一つとして、ゾシモスが書いていた話が自分に関係するものだったからということが考えられます。魔女と瓶に関する話です。この魔女と瓶に関する話はイディアに縁が深いものだったのでとりわけ批判的な意見を述べたということです。

ゾシモスは「魔女」に関わる物語として瓶の国に関する話と「盗賊」に関する話を別々に書いていたが、両者をつなぐ方法が見つからなかった。それで、ヒロインを設定することで、2つの物語を繋ぐことができたと考えられます。

これならゾシモスが頭の部分だけしか書けていなかった物語をすぐに完成できたことと瓶にまつわる話に物語中の事実が反映されてることをある程度整合的に説明できると思います。

では実際はどうだったのか?

では、アリスとイディアの出会いが実際はどのような感じだったのかというと、おそらくですが、フォンテーヌを去り砂漠で倒れたイディアを助けたのがアリスで、を授けたのも彼女だと思われます。そして、アリスが自分を助けてくれたのと同じように、イディアは砂漠で遭難した人を瓶の中に引き入れて助けるようになったと考えらえます。

そして、アリスならそれくらいの能力あっても驚かないのですが、「願いを叶える」という部分についてはたぶん脚色で、おそらくイディアが水形幻霊を使って人々の願いを具体化するうちにそれがそういう風に解釈されるようになったと考えられます。こうして、蜃境を送り出されたは、砂漠に願いを叶える秘境というものがあるという噂を流すようになったと考えられます。

そして、この物語はほかにも、人々の願いを叶える魔女という一つの「魔女」のモデルを提示していること、そして光なき国の大盗賊が「希望」を持ち帰るという内容も含んでいます。前者はクレー、後者はガイアと関係しています。

イディアの感想

この物語に対してイディアは『千夜物語』の構成に敬意を払いたいがために叙述が乱れている、道具の処理を忘れていたなどを指摘し批判的なコメントしています。一方で、「はい!でもストーリーの結末は良かったです。それだけはとても気に入りましたよ。それだけですけど。」と結末はほめています。

イディアとしては、上述のように、①~④の物語は事実との乖離が大きいです。一方で、⑤という一つの結末は、自分の在り方、自分のしてきたことの意味について一つの答えをくれるものと感じたのだと思います。

パイモンの感想

一方、パイモンはというと口が止まりません。

「ストーリーが進めば進むほどどんどんありきたりになってきて…なんか、ネタ切れかなって感じだった」「登場人物もちょっと意味不明で、なんでこういう編成になったのか分からなかった」など辛辣です。

(これについてはイディアも同意し、結末について上のコメントをした後、心海のところへ戻ります)

パイモンは批評を続けて、結末にも違和感があると指摘した上で、「少女の考え方が単純すぎる」「彼女の一族はまだ放浪してるのに…自分一人の幸せを追い求めるなんて、おかしすぎる」言います。そうして、イディアが良かったと言った結末も否定してしまいました。

ここのパイモンとイディアの食い違いが面白く感じました。

パイモンは自分の種族について決して口にすることはしないのですが、その背後にこういう考え方が潜んでいるのかもしれません。

後にわかるようにパイモンだけがイディアの正体に気付いていませんでした。ましてや物語の少女もモデルがイディアであり、純水精霊の話であるとは知る由もありません。

純水精霊の苦難については、パイモンはエンドラーからもズルヴァーンから聞いているので当然知っています。

イディアの出した結論

500年前のカーンルイアの災厄で純水精霊たちは自分たちの神様(水の国の旧主/前水神)という精神的支柱を失い、世界に散り散りになってしまいました。

軽策荘のように新たな居場所を見つけたローデシアのようなものもいれば、新しい水神についてスパイをしているようなものもいます。イディアのような「魔女」に助けてもらったものもいれば、亡き主人を偲び没地を「巡礼」するものもいる。

そうした中で、純水精霊はおのおので生きる道、生きる意味を探していかなければならなくなりました

イディアはパイモンの発言を聞いてなかったのですが、自分がしていることの意味をあまり考えてこなかったのだと思います。とりあえず砂漠に新しい居所を設けることはできましたが、秘境にはいろいろな人間が迷い込んできました。

そうした瓶に迷い込んだ人が流したものでしょうが、果てにはあらゆる願いを叶える秘境のうわさまで流れてしまい、それを目的にしてくる人までがくる始末です。イディアはそうした人たちに真心をもって対応し、送り返してあげました。こうして、彼女は人々の夢を見守る役目を担うようになります。

原神において願い(人々の思い)は特殊な力を持ちます。神の目も「願い」が一つの要素となっています。「蜃楼玉匣」はそうした人々の願いを蜃気として溜め、「願い」によってその力を放出することができます。このため、イディアは自分の「願い」について改めて考え直しました。

そして、「ヴェルーリヤ·ミラージュにやってきた旅の人たちが、蜃境の中だけでなく…蜃境の外でも、本当に叶えたい願いを叶えられますように」というのが自分の願いだということに気付きました。

イディアは大盗賊と瓶の物語を思い出しつつ、ヴェルーリヤ・ミラージュの在り方自体も考えます。

「私はただ、すべての夢や願いは、瓶の中にある光のようだと思ってるんです。夢を追い求める途中だろうと、すでに夢を叶えていようと…。 自分だけのこの光を思い出した時に笑顔でいられるのなら、それだけでいいんです…」

「瓶の中にある光」というのは、瓶の中でしか叶わない夢や願いでそれ自体は水形幻霊で作られたただのミラージュにすぎません。しかし、イディアと一緒に形にした願いは、その人の心に残り、たとえ瓶の外に出たとしても、その人の心を照らす光となるのでしょう。

また、ここを訪れた人の夢、願いというのは形となって記録されています。それが、次に訪れる人の刺激になってまた新たな夢につながっていく。イディアはヴェルーリヤ・ミラージュの意義をそういうところに見出したのではないでしょうか。

イディアはここに純水精霊としての自分の生きる意味を見つけたのだと思います。コレイはこうした他人の願いのために行動し、人の笑顔のためにたゆまぬ努力を続ける人を「高潔」だといいました。

ヴェルーリヤ・ミラージュと糸車

これはおそらく糸車(spinning wheel)だと思います。糸車は原料となる繊維(羊毛、綿、麻など)を一本の糸にする機械です。古くは手回しの紡車が使われていました。この糸を作る過程を紡績と言います。そして、織機は縦の糸(経糸)と横の糸(緯糸)を交差させて布を織ります。

ヴェルーリヤ・ミラージュに来た人の動機は様々です。単に迷い込んだ人、願いを叶えてくれる魔法の瓶という噂を信じて来た者もいれば、事故で死にかけてイディアに救助された人々もいます。

そうした人々の願いはいわばごわごわした繊維のようなもので、イディアの助けによってきれいな糸になりました。ヴェルーリヤ・ミラージュを出た人は、その糸を使って自分たちの作品を作り上げていくのだと思います。

後日譚

話はこれで終わらず、今回のスキンのストーリーに後日のガイアとクレーの会話が収められています。

クレーについて

今回の話では瓶の国に関して2つの物語が出てきます。一つは、アリスがクレーに語った瓶の国の冒険隊に関する物語です。もう一つは、ゾシモスが作った、瓶と炎の魔女の物語です。前者については内容がそこまではっきりしていないのですが、後者と同様に「魔女」が重要な役割を果たしたと考えられます。

これらの話とヴェルーリヤ・ミラージュの冒険で「魔女」を演じることで、クレーは「魔女」とはなんなのか?ということを考えるようになります。

初めは魔女になって空をびゅんびゅん飛びたいという可愛げのあるものでしたが、大人の理不尽なケンカを見て、誰も悪くないのにどうしてこういう事態が起こるのか悩み始めます。「魔女」とは単に空を飛びまわってるだけではダメなのです。

ヴェルーリヤ・ミラージュでの冒険を終え、モンドに戻ってから彼女は自分の考えを整理しました。

魔女にとって一番大事なことは何?」…クレーも以前から、「魔女」という言葉は聞いたことがあった。しかし、「炎のような赤い魔女」の物語を聞いて以来、クレーの中でこの言葉の意味はだんだん変わってきていた。(『星燭に揺れる爛花』)

「魔女にとって一番大事なこと…それは魔法の不思議な力をどのように使うかってことさ。(中略)…クレーお嬢ちゃんは、どんな風に魔法を使いたいんだ」とガイアは尋ねた。するとクレーは、「みーんなを幸せにしたい!」と答えた。

全文

クレーは今回の冒険を通じて自分なりの「魔女」像を作り上げました

ガイアについて

冒険を終え、モンドに帰って来たあと、クレーはガイアについて色々尋ねます。

クレーは「なんで短刀の大盗賊はいつも短刀を持ち歩いているのか?」と聞いた。それに対して、ガイアはクレーが満足のいくような回答を考え始めた。

ここでは騎士である自分(騎兵隊長)と盗賊を比較して考えています。盗賊を取り締まる立場が騎士なのでクレーから与えられたロールは本来の自分と真逆でした

善悪のクヴァレナからも分かるように、善の霊光と悪の霊光たるアビス(≒カーンルイア)においては価値が転倒しています。善人が悪人であり、悪人が善人である。賢者が愚者であり、愚者が賢者である。神像もひっくり返されてます。そういった点も反映されているのかもしれません。

「生き方は人それぞれ。大盗賊が騎士の剣を持ち歩くことはないし、正統派を貫く騎士が、こっそり短刀を取り出して人を傷つけることはない。もしこの鉄則に反する物語があるとすれば、きっとそのキャラクターは運命を裏切ったという設定であるはずだ」(『帆影に戯る風』)

全文

騎士であるガイアが短刀を握るときそれは…というように微妙に匂わせるような感じになっています。

ガイアはご存じのとおり、カーンルイア人の末裔という身分とモンドの西風騎士団の騎士という二つの身分を持ち合わせています。ガイアは自分は騎士であり、必要であればアビスも喜んで倒すといっていますが、果たしてそれは本心なのかと思わせる機会が少なくありません。

ガイアの抱えている運命とは「カーンルイアの希望」のことだと思います。カリベルト(第3章6幕)においては名字に隠された「面倒事」は知らなかったと言っていますがウソで、彼は自分の出自や使命を知っています。「ここに残れ。お前は我々の希望だ。悪く思うなよ、ガイア」(ブリュー祭)、隠し収納にある謎の箱(残像暗戦)などからも明らかです。

ただし、ディルックとの関係を考えるとすでにこのことについてガイアの腹は既に決まっているだろうということは、カリベルトの記事でも書きました。しかし、実際はまだ悩んでいる部分があるのかもしれません。

まとめ

今回の話ですが、純水精霊であるイディアが自分の存在意義を問い直して積極的な意味を見出していくこと、クレーは「魔女」を演じながら魔女とは何なのかについて自分で答えをみつけていくところ、ガイアも相変わらず自分の運命と向き合っていることなど盛りだくさんで個人的には面白いと感じました。「魔女」としての一歩を踏み出したクレーに期待したいところですね!

ヴェルーリヤ・ミラージュに関してはもう一つクレーの記事を書きたいと思ってます。それから、6月に書いた書きかけの記事が沢山あるのでフォンテーヌ行くまでにはなんとか完成させられればと思います。

(おわり)

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