開拓クエスト「風起雲湧、相見える鋒鋩・前編」(ver2.4)に関する記事です。ver2.3と同様に長めの記事を一つ書いて、あとは余力があれば何本か記事を書きたいと思っています。
仙舟羅浮についてはその背後の設定が分かれば面白いのですが複雑です。今回の記事は必要な範囲で羅浮の設定を掘り下げました。
今回のクエストは狐族の問題と思わせておきながら実は持明族の問題が重要になっていると考えられます。
開拓クエスト幕間・前編ほか、今までの同行クエスト(白露、飲月、鏡流など)、冒険クエストのネタバレがあるので注意してください
あらすじ
ピノコニーの事件の後、景元は星天演舞に星穹列車を招待しました。
姫子はルアンと会う用事があるので、今回は3人が羅浮に行くことになります。
演舞典礼は仙舟が選んだ「守り人」と戦うことで武威を示すイベントです。勝者には賞金、商品、名声が手に入ります。
武徳を示せば民の心を落ち着かせて士気を高めることができるという将軍の狙いでした。
一行を出迎えてくれたのは彦卿。いきなり歩離人が暴れ出す事件が起きます。この歩離人は謎の少女が倒しました。
景元に会うとそこには朱明の懐炎将軍、先ほどの謎の少女雲璃もいました。懐炎はあくまでプライベートで来たと主張しました。
雲璃は懐炎の孫弟子で「焔輪八葉」の一人です
懐炎は雲璃のことを「人見知りの激しい、人付き合いの苦手な子供」と評しています。
景元は懐炎との面会があるので公務を彦卿に任せます。カンパニーの積み荷に関するトラブルを宥めるという任務です。工造司ではスコートと再会しました。
スコートは「金人旧巷、市店の喧騒」(ver1.3)に出てきたカンパニーの社員です。今回もこりずにまたトラブルを起こしていました。
彼についてはさらにイベント「花咲く習剣録」でも出番があるので、まだの人は是非進めてみてください。
引き延ばしをはかろうとしているスコートを仲裁しに来たのが霊砂。彼女は同盟から派遣された丹鼎司の新しいトップです。ちょっとやり手な雰囲気を出しています。
スコートが荷物の検査をしぶしぶ承諾すると、コンテナの中から狼のような機械が出て来て暴走しました。スコートは次は幽囚獄で再会するかもしれませんね。
一段落して丹鼎司で霊砂と雑談することになった一行。霊砂は将軍の責任について触れます。薬王秘伝による被害が拡大したのには将軍にも責任があるはずだと。
彼女の師匠である雲華は景元によって更迭されており、何か確執があったことを匂わせています。
丹鼎司で雲璃と再会し、彦卿は「手合わせ」をします。そこを、曜青の将軍飛霄が二人を仲裁しました。
神策府で懐炎と再会し、懐炎はそこで真の来意を告げます。飛霄と懐炎は建木の事件が原因で元帥により派遣されてきた。同盟は景元の将軍の資質を疑問視したからです。
ここで懐炎がおもしろい提案をします。勝負ごとには勝ち負けがあり、勝者と敗者を分けてしまう。
協力して一人の者を教えることによって勝利を収めることが出来れば、二人とも何かを得ることができる。
そういう理由でなのかは彦卿と雲璃の指導を受けることになりました。ここから演舞典礼の前日までの修行の話はイベント「花咲く習剣録」で語られます。
演舞典礼の前日に椒丘が来て、一行は典礼の会場の場所を下見に行くことになります。。
その途中で彼らは怪しい狐族と出会いました。あとを付けると彼らは変装していた歩離人でした。演舞典礼の背後で何やら怪しい計画が進行しているよう。
場面は切り替わり開拓者パート。
懐炎、景元、飛霄の三人の将軍に開拓者と丹恒が立ち合います。
開拓者は飛霄の質問を受けることになります。
飛霄は景元の責任について触れます。
薬王秘伝の成長を察知できなかった職務怠慢、
ハンターの言い分を鵜呑みにして危機解決をナナシビトに任せた職務放棄、
そして、独断で演舞典礼を開催すると決めた戦略不全の3つです。
受け答えを通じて飛霄は彼らがウソをついていないことを見抜きました。開拓者たちは十王に奏上する証言を残すために十王司に向かいます。
飛霄が仙舟羅浮に来たのは元帥の命令でしたが、啣薬の龍女(白露)に自分の病気を診てもらうこと、曜青の仇敵である歩離人の戦首呼雷を曜青に輸送するという用事もありました。
幽囚獄では呼雷の輸送に先立ち、雪衣の案内の下で椒丘とモゼが面会しようとしました。しかし、歩離人がこの現場を襲い、呼雷の脱走を許してしまいます。
一方、開拓者たちは寒鴉と一緒にいたところこの騒動に巻き込まれます。雪衣の案内の下、騒動から逃げ延びたモゼと合流して呼雷を追いました。
あと一歩というところで呼雷には逃げられます。果たして演舞典礼はどうなるのか。
後半へ続く。
仙舟に潜む5つの影
景元は水面下に潜んでいた勢力を「淀み」と言いました。今回の記事ではその「淀み」である5つの勢力について検討したいと思います。
初めに挙げておきます、薬王秘伝、持明族龍師、曜青の持明族(天風君?)、歩離人(+幻朧)、カンパニー(技術開発部)です。
今までの内容を復習しつつ解説したいと思います。
薬王秘伝の影
3つの種族
仙舟同盟は仙舟人、狐続、持明族の3種族からなる同盟です。
仙舟人はかつて「建木」という形で薬師の力により長命を手にしました。しかし、それが招いたのは苦しみの時代でした。
仙舟人はそれを乗り越えるために雲騎軍を結成して豊穣の忌み者と戦い、十王司を立て死を定めました。
一方、狐族と歩離人はかつて「青丘」という場所にいました。そこで「赤泉」により長命を手にします。その後は、仙舟人と同じです。苦しみを乗り越えて、青丘の外に出てそこから時間が経つにつれて故郷の場所が分からなくなった。
歌によれば、終わりのない狼の冬は、青丘の太陽が33回まわった後も続いていたという。物資の不足と飢餓によって、人々は信仰上崇拝していた動物すらも、飢えを凌ぐために食べざるを得なくなっていた。そして大地に白骨が広がるかと思われた時、1人の救世主が世界で最も高い山に登った——その救世主は、狐族の神話の中では「塗山」という名の女性だとされているが、歩離人の歌では「都藍」という名の男性になっている。救世主がどのような名前で呼ばれていようと、その人物が長生の主に人々が生きるための食料を与えてくれるよう、祈りを捧げたことは事実だ。すると、不思議なことに山の頂が裂け、その隙間から甘美な「赤泉」が溢れ出した。
赤泉を飲んだ人々は、口にした動物の肉から力、敏捷性、強靭さを得た。さらには彼らの血にも野性が漲り、獣らしい外見的特徴が明らかになっていった――この時から、世界は以前とは違うものに変わったのである。
新たに生まれた犬人たちは、赤泉を媒体として、そこからあらゆる道具や食料を創り出した――畑には穀物ではなく肉が植えられ、身に纏うのは布ではなく胎盤や臍の緒になった。青丘文明を恐怖に陥れた極寒の雪の地でさえ、もはや恐れる必要はない。犬人たちは極寒の地で生物膜を育て、暖かいドームを作った。これによって狼の冬の苦難を遮断したのだ。1
狐族と持明族はあとから同盟に合流します(合流した時期は不明)。
持明族は「建木」を封印するために自らの海を差し出しました。それ以後、羅浮の龍尊は建木の封印を管理するという責務を負うことになります。
ここで知っておいてほしいのは各種族の長命の原因が異なるというところです。仙舟人は薬師、持明族は「不朽」の星神龍の血筋であることが原因です。
複数の原因が交差するとどうなるのか?については後々で重要となってきます。
「薬王秘伝」の起源と薬師信仰
薬王秘伝には仙舟人、狐族、持明族、殊族の民(短命種)など様々な構成員がいました。
仙舟羅浮は他の種族に極めて寛容な姿勢を取っています(「殊俗の民」などという若干見下した呼び方をしていますが)。例えば街中には平気で薬乞い(「豊穣」の派閥)の子供がいます。
これはおそらく仙舟人たちも薬乞いであった過去があるからでしょう。「長命」を求めること自体は生き物に普遍的なことで、同盟はその中でも寿禍(薬師)の力を求めることを禁じているものと考えられます。
しかし、この寛容さが付け入る隙になっているという側面があったことは否定できません。
これに加えて、羅浮は構造的に薬師の信奉者が生まれやすい土壌になっています。いつどこにいるか分からない帝弓よりも自身に長命をもたらしている薬師の方が身近に感じる人もいるからです。
また、第三次豊穣戦争もその原因の一つだと考えられます。この戦争では、帝弓の矢によって敵だけでなく味方にも多くの犠牲が出ました。このことから帝弓に対して疑問を抱く人も居ました。
実はこの帝弓の降臨には符玄と景元が関係しています。符玄が方壺滅亡の危機を予見し、将軍である景元に提案しました2。
「仙舟『玉殿』には同盟の観星第一重器、瞰雲鏡があります。この装置は観測だけでなく、外部に信号を送ることもできる…つまり、船を使って瞰雲鏡を方壺に運び、帝弓の光矢が最後に出現した場所に向けて助けを求めるのです。今すぐ動けば、あの惑星(計都)が墜ちる前に事態を好転させられるかもしれません」
この出来事に納得できなかった一人が丹枢です。彼女は親友の雨菲(Yufei)を失ってしまいました。
丹枢は生まれつき目の見えない天欠者で、いじめられていました。そんな彼女を支えてくれたのが雨菲でした。雨菲は医師として後方支援に当たっていたところ、帝弓の流れ弾によって亡くなってしまいます3。
戦争が終わりました。私たちは勝ちました。雨菲は死にました。
なぜ後方の野戦病院にいた彼女が死んでしまったのか、どう考えても分かりません。
私は狂ったように雲騎軍に原因を問い詰め、やっと教えてもらうことができました。
帝弓の司命が世に降臨し、神の矢で歩離人の艦隊を殲滅した時、神の恩恵により「付加的な傷害」が加えられました――その傷害を負った一つに、雨菲のいた野戦病院がありました。
彼女は豊穣の民ではなく、帝弓の司命の神の矢によって、骨の灰さえ残らず消されてしまったのです。
帝弓の司命よ、どうして?
丹枢はこの不条理から帝弓を信じることができなくなります。そして薬師の信仰へと走りました。これが今の「薬王秘伝」のはじまりです。
この羅浮内部の亀裂に目をつけたのが幻朧で、彼女は停雲になりすまし、近くでその分裂と崩壊を楽しんでいました。絶滅大君は仙舟内部の薬王秘伝と手を結んでいました。
薬王秘伝とその他の勢力の関係
① 薬王秘伝と持明族の関係
仙舟人には魔陰の身があり、持明族には脱鱗転生がある。そして、狐族も人間と比べれば相対的に長いですがやはり寿命があります。
完全な(欠点のない)長命を実現するためには魔陰の身を克服する必要があります。その研究をしていたのが丹枢でした。彼女は一つの答えを見つけます。それが「不朽」の龍の力を用いる方法です。
短命種と龍についてはクエスト「トッド・ライオットの学術研究」で語られています。彼は燭炭学派(博識学会)の学者で、仙舟には長命を求めてきていました。
随分前のクエストなのでおさらいすると博識学会の学者トッドは開拓者を利用して「長生を求める」という罪を犯します。
彼は開拓者が忘れ物を取りに行っている隙に持明族の卵からあるものを盗みます。そして、それを自らに注射して若返りに成功します。
…持明の卵の抽出物をチューブ1本分入手できた。実を言うと、注射器の針では彼らの「殻」を突き破れないのではないかと心配していたのだ。帰り道、星槎海で星槎の安全運転を監視している奴に鉢合わせて、驚きのあまり心臓が止まるかと思ったが、幸いにもバレずに済んだ。
これはトッドの師ベニーニの記録です4。トッドはこれをよんで犯行に及んだと考えられます。短命種が持明族の卵の抽出物を利用すると若返ることができます。
しかし、この若返りは止めることができず、最終的には消滅してしまいます。つまり、短命種と龍は相性が良くないということです。
狐族と龍については、すでに書きましたが飲月君が白珠に対して龍化妙法を用いて新たな命を授けようとしました。これは部分的には成功しました。
ただしこれは倏忽の血肉も重要な役割を果たしていると考えられます。
仙舟人と龍。ここで出てくるのが龍蟠蛟躍です。薬王秘伝の調査中に見つけた薬で、この薬を分析してもらうために出会ったのが丹士長である丹枢でした5。
「龍蟠蛟躍」の核心的な原理は、龍祖のこの力を他の生き物の体内に転移させることである。岱輿トウキ、伏冬桑、波月人参…これらの薬剤の核心的な薬理作用はただ一つ、即ち持明髄の細胞を再生および活性化し、薬を注入された体内で活動を再開させることである。
長命種の中で、これらの「薬剤」は「制御可能」な形で魔陰の身を誘発する。本来であれば寿瘟禍祖の影響で無秩序に成長するはずの身体の組織が、龍祖の引導を受け、「制御可能な範囲で制御不可」の状態となる。それによって、受容体は理性を保ったまま、魔陰の身にしか得られない力を獲得するのである。
この薬には持明髄が含まれています。この薬を摂取し、もし「解毒薬」を開発することができれば魔陰の身は不治の病ではなくなるということを丹枢は書きました。
※ただし、薬王秘伝がこれに成功していたのかは怪しいと思っています。なぜなら丹枢のもとでの「薬王秘伝」というのはできてから30年足らずの組織にすぎないからです。とりあえず魔陰の身を誘発し、意識を鮮明にすることには成功したようですがそれ以降どうなるかは全くの未知数です。開拓者に「餐雲承露丹」という薬を渡していたようにまだ改良中だったことが伺えます。丹枢より前の人体実験の記録も残っており、丹鼎司ではこうした禁忌の研究が細々と続けられていたことが分かります。
以上のように、長命種に龍の要素が加わると新しい可能性が開けてきます。
持明族の卵は「珠守り人」が守っているため普通の人は近づくことができません。つまり、薬王秘伝が龍蟠蛟躍をつくるに当たっては持明族の協力が不可欠であると考えられます。
つまり、持明族にも薬王秘伝に対する協力者がいると考えられます。
② 歩離人との関係
薬王秘伝は歩離人とも接近していたことが分かっています。その構成員が戦首の呼雷を脱獄させようとしていました6。
氏名:清寧
性別:女
罪名:破牢釈囚
罪状の概要:薬王秘伝の構成員。前歩離戦首の呼雷を脱走させようとした。天涯洞で地衡司に逮捕された。
氏名:若茗
性別:女
罪名:破牢釈囚
罪状の概要:薬王秘伝の構成員。清寧の事件の共犯。天涯洞で地衡司に逮捕された。
このことから薬王秘伝と歩離人も関係があったと推測されます。
③ 薬王秘伝と龍師の関係
寒鴉の報告にも丹枢と龍師つながりが匂わされていました7。
私と部下は、丹鼎司の過去70年以上の管理文書、丹枢の非人道的な実験記録、彼女と持明族の龍師とおぼしき者がやり取りした手紙を詳しく調べた。これらから、彼女たちが一時的な興味により、古代の邪教を名乗って行動する犯罪集団ではなく、綿密に陰謀を練っていた妖人であることが判明した。
次は羅浮の龍師について検討します。
持明族の龍師の影
薬王秘伝の問題で中でも深刻なのが持明族の龍師が関わっていたという事実です。持明族内部はやや複雑な状況になっています。
持明族の内部事情
龍師は龍尊をサポートし、持明族をまとめる役割を担っています。持明族の間には白露派と丹恒派がいます。
※ここでは龍尊制度自体の廃止を望んでいる人は除外します
丹恒が来る前は白露が龍尊としていました。白露は前任の龍尊から指名をうけたという点で正統性を有しています。しかし、彼女はこの地位には特に関心がないようです。
白露は尻尾に封印が施されているためか成長が遅れています。
それから、龍尊様はすでに雷を呼び、水を操る力を発現させています。その力が暴走して『飲月の乱』の惨事を繰り返さないよう、一族の職人に再度『尺木の鎖』を作るよう命じ、龍の尾に装着しました。8
これは、厄龍となり暴走してしまうことを阻止する目的と、龍師にとっても彼女が幼いままでいる方が都合がよかったためと考えられます。
しかし、追放されていた丹恒が羅浮に戻って事態が動きます。彼は頭に角冠をいだき、そして建木の封印を解くという「龍尊の力」を見せつけました。
その結果、丹恒のほうが龍尊に相応しいのではないかと考える人が現れます。こうして、白露の暗殺未遂事件が起きます。
この事件には曜青の持明族も絡んでいた可能性が高いと考えられます。
背景:飲月の乱
「龍尊の力」が割れたのは飲月の乱が原因です。
飲月の乱は「雲上の五騎士」の一人である飲月君が「不赦十悪」の罪を犯し、強制脱鱗に処された事件を言います。
前史として、羅浮に豊穣の使令「倏忽」が建木を奪いに来た事件がありました。将軍騰驍は歳陽の話でも出てきました。歳陽の燎原を倒し、造化洪炉に閉じ込めた景元の前の将軍です9。
倏忽は「血塗獄界」という術を使い、飲月君は龍狂になってしまいます。これを破ったのが白珠でした。
飲月君は白珠に恩を返すために応星と共謀して白珠を生き返らせようとしました。その際に用いたのが豊穣の使令の肉体と龍化妙法です。
持明族の龍尊は龍化妙法を用いることで龍脈を次の龍尊へと継承して、自身は脱鱗するとされています。つまり、飲月君は自らが脱鱗する代わりに白珠を助けようとしました。
これ自体「不赦十悪10」に相当する大罪ですが、ナナシビトである白珠ならば外の世界でもやっていけるだろうという楽観があったのかもしれません。
しかし、これは大失敗します。白珠は厄龍となり、持明族の卵を破壊するなどの被害を出しました。鏡流がこの厄龍を討伐しました。
飲月はこの騒動により強制脱鱗の刑に処されることになります。一方、鏡流は魔陰の身を発症してしまい、同族殺しの罪を犯します(この事件は飲月の乱の翌年の出来事です)。
こうして飲月の乱は幕を閉じました。
「龍尊の力」とは?
「龍尊の伝承」が断絶することを恐れた龍師が小細工をし、丹楓の脱鱗が中途半端になされました。このせいで丹恒は残された「龍尊の力」(丹楓の力)を使うことができます。
鏡流も景元も刃も丹恒の用いる力は飲月君と同じものであると評価しています。
この3人は武人ですから主に戦闘面における飲月君の話をしています。しかし、飲月君には治癒の力もありました。
丹恒は今のところこの生命に関わる力(治癒の力)を有していません。
「龍尊の力」とは破壊の力と生命の力と考えられます。具体的には水(と風)を操って戦う能力と治癒に関わる能力です。
※白露も水を操る力(雲吟)と雷を操ることはできます。
そして、丹恒の能力は封印を解く能力と、白露の能力は封印を再びする能力と関わっています(丹恒が「建木」を封印しようとしたができず、白露が封印する能力を見せた場面がありました)。
丹恒が破壊の力であるとすれば白露は創造の力であるとも言えます。この二者が入り混じったものが「龍尊の力」だと考えられます。
「建木」の封印を維持するにはこの2つの能力が必要だと考えられます。
龍師の動機に関する推測
慈悲深い女の声:持明族は輪廻することはできても、命を生み繁殖することはできない…つまり、天災や人災によって人口が減ることは避けられません。
持明族は輪廻することはできても、新しい命を生むことができないとされています。持明族の人口は減る一方です。
これをふまえると、飲月の乱において多数の持明族が犠牲になったことや第三次豊穣戦争で方壺が受けた被害の深刻さが分かるでしょう。
しかし、飲月の乱を経て新たな可能性が生まれました。他の種族を持明族にしてしまうという方法です。
羅浮の龍師の目的は「種の存続」だと考えられます。
しかし、ベニーニとトッドの実験からわかるように持明族の細胞を受け入れることができる種族は限られていると考えられます。
狐族である白珠の場合は豊穣の使令の血肉と龍化妙法が鍵となりました。このため、龍師としては①「龍尊の力」(龍化妙法)を取り戻すこと、②豊穣の(使令の)血肉を入手すること、③ベースとなる狐族を手に入れることが必要だと考えられます。
もっとも、前述のとおり「龍尊の力」は分かれてしまっています。丹恒を据えるだけでは力は取り戻せません。丹恒の中にある丹楓の意識を呼び起こし、白露から力を取り戻し、そうして完全な龍尊を蘇らせること、これも龍師の目的だと考えられます。
「丹楓の意識」なるものが本当に存在しているのかまだわかっていませんが、丹楓が騒動を起こした動機を考えればそれはないだろうと思っています(いつ回収されるかは謎)。
まとめると、新たな持明族の誕生には、豊穣の使令の血肉と龍化妙法が必要。前者のために、龍師たちは薬王秘伝に接近したのではないでしょうか。
そして白珠が狐族であったことからわかるように狐族も必要となります。ここで狐族の供給源となり得るのが、狐族の信徒を抱えている薬王秘伝と狐族を奴隷として扱う歩離人です。
曜青の持明族の影
モゼが薬王秘伝の連中が使っていた姿を消す技が曜青の「天風君」傘下の持明族が習得している「風幕」に似ていると言っていました。
ここから少なくとも曜青の持明族が関わっていることがわかります。飲月の同行クエストで白露を暗殺しようとした刺客が同じ術を使っていました。
天風君についてはあまり情報がありませんが、飲月君の死刑に反対したことと羅浮の龍尊である白露の動向をうかがっていることが分かっています11。
また数ヶ月前、曜青の『天風君』から龍尊様の様子を尋ねる手紙が届きましたので、長老たちの方針に従って返事を書きました。具体的には、まだお若い白露様には龍師の補佐が必要である。成人の儀が終われば、龍師は『飲月君』の尊号を奉上することになる…といった内容です。
彼らは羅浮の龍師とは違った目的を持っていると考えられます。
なぜなら、天風君が龍尊であるならば丹楓と同じようにその伝承のために龍化妙法が使えると考えられるからです(丹楓独自の術とは明言されてないはず)。
白露はむしろ貴重な新しい持明族のサンプルともいえますから「種の存続」を目的とする羅浮の龍師がその命まで狙う理由はありません。
確かに白露が亡くなれば丹恒が次の龍尊の候補となりますが、これは幼い白露をコントロールするよりはるかにリスクの高い行為です。
つまり、羅浮の龍師たちは白露を殺害するほどの動機はないと考えられます。
このことから白露の暗殺を目論んでいる者は別の目的を持っているか、あるいは、曜青の龍師たちが天風君のあずかり知らぬところで動いているかのどちらかです。
「別の目的」の一つとして考えられるのが、白露が純粋な持明族ではないからというものです。単に白露が龍尊に相応しくないということです。
純粋な持明族からするとこの点が気になったのかもしれません。
カギになってくるのが霊砂だと考えられます。
彼女の師匠である雲華はかつて持明族と対立し、丹鼎司を追放されました。そしてこの追放を決定したのが景元です。
龍師たちは霊砂に媚を売っています。霊砂は丹士長の玉絡との会話から龍師たちと距離を置いていることがわかります。
霊砂がなぜ重要となってくるかというとこれは持明族内部の自浄作用と考えられるからです。
以上が持明族内部の問題です。重要なのは「龍尊の力」が分かれていること、持明族には「種の存続」の問題があること、そして白露の暗殺未遂事件が意味することだと思います。
頭の固い古い考えを捨てきれない持明族とより柔軟な考え方を持っている持明族の対立ともいうことができると考えられます。もちろん丹恒と霊砂は後者だと考えています。
白露は持明族のもつ平和的な部分だけ継承することに成功したとみることもできます。
歩離人の影
今回の話の中心になっている種族です。そのルーツは狐族と関係があります。
狐族と歩離人は「青丘」に住む元々は同じ種族でしたが途中で分岐が生じて別々の種族となりました。彼らは「赤泉」によって長命を獲得したとされています。
商業・農耕をするのが狐族で、狩猟・牧畜をするのが歩離人です。文明と野蛮の対立と言ってもいいと思います。ここでいう「狩猟」には略奪も含みます。武器牧場という生々しい表現もありました(歩離人の器獣は人を食べます)。
歩離人では部族の長を巣夫といい、その巣夫の中から戦首が選ばれます。戦首であった呼雷が鏡流によって倒された後は部族はバラバラになってしまったとされています。
しかし、30年前の第三次豊穣戦争で仙舟同盟は痛手を負いました。組織化が十分でない歩離人でさえこの被害ですから同盟が呼雷を警戒する理由も分かるでしょう。
そんな部族を再び結集させようとしているのがマングスです。彼女は歩離人の猟群(部族)を導いてより大きな猟群を作っていることが確認されています。
マングスは「長生の主の使者」を自称する女で、変幻自在だという。これは幻朧だと考えられています。
薬王秘伝の事件が起きたとき幻朧は停雲に化けていました。彼女の美学は「直接手を下さずに内部に混乱を引き起こし、相手を壊滅すること」だと考えられます。
羅浮においては薬王秘伝という内部の異分子を利用して、羅浮の崩壊を目論みました。停雲に成り済ますことで他にも内部にスパイがいるかもしれないという疑惑の種をまきました。
今度は歩離人と仙舟同盟の対立を利用しようとしています。
カンパニーの影
今回は博識学会も怪しい動きを見せています。
博識学会はニューロンテネオン号を用いて武装考古学派に「武器」を送ろうとしていました。これらについては「スターピースカンパニー羅浮駐在オフィスからの届出」、「輸送船ニューロンテネオン号の航海日誌」、「ニューロンテネオン号貨物調査報告書」に詳細が書かれています。
かいつまんで言うと博識学会はカンパニーの物資輸送部に秘密裡にある兵器を送らせていた。その兵器というのが「咆哮の棺」と呼ばれる歩離人の生体組織を用いた兵器でした。
名目上は「クリムト立憲国にいる武装考古学派を支援するための兵器」でした。
武装考古学派はたまに出てくるちょっと危ない星を調査している博識学会の派閥です。「ヘルタの手記」にも最も危険な遺跡を探索する学派と書かれています。
星間探査と文明の考古学に情熱を傾け、常に最も人を寄せ付けない惑星を旅し、最も危険な遺跡を探索する学派。想像してみるといい。徹底した武装で、学派は傭兵を率いて探査船から飛び出し、古代の建物の隙間をゴキブリのようにすり抜け、琥珀紀に忘れ去られた運河へ、途中で何人か馬鹿がトラップに引っかかって生贄となる。目的地に到着すると、貴重な古文書や書類を掘り出し、容赦なく爆薬を仕掛け、通路を爆破で作り、そして嬉々として船に乗り込んで離れる……彼らは学者というよりも傭兵だったと言う意見もあるが、その通りである。
わかりやすく言うと、危険な遺跡であれば誰も調査したことのない未発見の滅びた文明があるはずだという思考だと考えられます。危険であればあるほど未発見の可能性が高くなるということです。
この船が歩離人によって襲われました。それを朱明の使者(雲璃)が助けてやむなく羅浮に寄港したというものです。
この物資輸送部に所属していたのがスコートです。
積み荷のコンテナは幽囚獄に持ち込まれていました。丹恒によるとこれらは全て仕組まれていたものだと考えられます。つまり、送り主(博識学会)と歩離人がグルであったと。
博識学会と関係が深いのがカンパニーの技術開発部です。
技術開発部はあの「虚数崩壊インパルス」を開発した部署としても知られています。今回の背後にはこの技術開発部も絡んでいると考えられます。
「玉殿」と符玄
今回の開拓クエストでは符玄が玉殿にいることが明かされています。同盟の許可なく将軍代行をしていたのだから当然と言えば当然です。
玉殿はあまり出て来ない場所ですが、符玄さまと縁のある場所です。
符玄は仙舟「玉殿」の観星士世家、符氏一族の出です。そして玉殿の太卜司の太卜を師として卜占を学んでいました。
符玄は師匠から「符玄の手によって師匠の運命が絶たれる」という未来を告げられます。その「運命」を避けるために彼女は玉殿を離れ、羅浮に活動の場を移しました12。
「知っているか?『十方光映法界』に問いかけ、卦象を解読した後、僕は君の手によって自らの運命が断絶されると確信したんだ。それでも僕は依然として君を弟子にして、仙舟『玉殿』の太卜たる座を受け継いでくれる日を待つことにした。なぜなら、すべては運命に定められているからだ」
符玄がやたらと羅浮の将軍の座を求めているのもこの「運命」を避けるためだと考えられます。そんな符玄が玉殿に行っているということはよほどの理由があると考えられます。
羅刹と鏡流も玉殿にいます。将軍「爻光」が興味を示したからです。
呼雷は約700年前に鏡流に破れて幽囚獄に捕まることになったので、彼女に恨みを抱いている可能性は高いです。
次のストーリーでは玉殿も重要な意味を持ってくると考えられます。
その他の伏線など
飛霄の病気?
曜青の狐族ということはやはり歩離人と「月狂い」が関係してくるのでしょう。白露も彼女の「病気」を治療することができませんでした。
彼女の専属医である椒丘は呼雷にその治療の鍵があると考えています。
しかし、「豊穣の忌み者」を利用した治療は「不赦十悪」に相当するものでもあり、一波乱ありそうです。
椒丘の基本的な考え方は、(戦場では)「生き延びること」が唯一の道理であるというものです。生きて帰ってくればいくらでも価値は再定義できる。まずは生きることを最優先に考えようと。
一方、飛霄は自分の「運命」を受け入れています。仮に椒丘が呼雷を用いた治療を提案したとしても受け入れる可能性は低く、彼は独断で動いているものと考えられます。
停雲の行方
よりによって天才クラブの一番ヤバそうなやつに見つかってしまった停雲。
仙舟では長命に関わる全てのものが門外不出となっています。ということは狐族である停雲のDNAについても同様に外部へ持ち出せないものとなっているはずです。
つまり、ルアン・メェイにとっては停雲はかなりいい実験素材です。
果たして停雲は無事なのか?もしかしたら次に出会うのは「停雲」ではないかもしれない…。
懐炎だけが老いている理由
これも何かありそうだと匂わせていました。なのかがあまりにも失礼な発言をしています。
たしかに今までの仙舟人を振り返ってみてもそれほど見た目が年老いた人はいなかったと思います(子工造司の公輸先生はちょっと年を食ってそうにみえましたが)。
一番ありそうなのは歳陽「火皇」と関係があるからというものです。
景元、懐炎、飛霄はそれぞれ髪の色が同じです。これは帝弓七天将であること、すなわち、星神「嵐」の力を受けていることが関係していると考えることもできます。
飛霄はおそらく御空と同じ綺麗な色の髪をしていたと考えられます。イラストによってはかなり近い色をしています。
これはおそらく第三次豊穣戦争の場面ですが、ちょっとよくわかりません(白っぽくも見えなくないですが)。
もっとも、これは混血であることを仄めかしていると読むこともできます
ちなみに景元は子供の頃から白っぽい。
髪の色≒嵐の力と関係があるとはちょっと言えないかもしれませんが意識しておいても損はないと思います。なぜなら、この仮説が正しいなら元帥も同じ髪の色をしているからです。
※フカの中で一番近いのがこれ
仙舟人と豊穣の忌み者の境界
「仙舟人と忌み者の違いは何か?」
丹枢はこの問いに対し、生物学的分類の問題ではなく「文化の問題」であると答えました。
丹枢:同じく「豊穣」の影響を受けている「豊穣の忌み者」と仙舟人の違いは何か、ご存じですか?私は丹鼎司で教わった知識をもとに、この問題に対して真剣に向き合ってきました。そして、私の中で導き出せた結論は一つだけ…それは、特に違いはないということ。唯一の違いは「豊穣」がもたらした長命種の本性を受け入れたか、それに背いたかにあります。曜青の狐族の体内には、豊穣の民の中で最も残酷と言われる歩離人と似た血が流れている…しかし、彼らは「忌み者」ではなく「仙舟人」なのです。つまり、「忌み者」と「仙舟人」の差は生物学的分類の問題ではなく、文化の問題だということ…
丹枢:忌み者が仙舟に入れば仙舟と成り、仙舟人が忌み者に入れば忌み者となる。ただそれだけなのです。忌み者たちは本性に忠実で、より強い肉体を得るために、何の躊躇いもなく己の血肉を変えてきました。一方仙舟では、その手段は言語道断の禁忌とされています。これで、忌み者に「天欠」がない理由をご理解いただけましたか?
まず曜青の狐族ですがこれは歩離人の血が混ざっているということが分かっています。飛霄に尻尾がないのも関係があるかもしれません。
椒丘も他の狐族と違い嗅覚を強調する場面が何度かありました。
モゼについては「鳥人怪人」という謎の称号がついています。これは造翼者との関係を匂わせていると考えられます。彼は椒丘との会話からかつて獄に入っていたことが分かっています。
『帰正本末』序文には意思疎通ができる歩離人の話がありました。
新しい持明族である白露もこの問題の延長線上に考えることができます。
仙舟人は自ら死を再定義しましたが、豊穣の民は不死であり続けています。このアンバランスの中で仙舟人は「薬師」を根絶するその日まで戦い続けなければなりません。
終わりの見えない戦いの中で仙舟人の中には少なからず厭戦感も出ています。こうした矛盾をどう消化するのかも気になるところです。
この戦いの「終わり」を見つけたのが羅刹と鏡流です。この二人は必然的に今後の物語の中心になってくると考えられます。
そして終わりなき戦争に見えた終わり(=平和)を象徴する存在が白露だと思います。
以上のように次の話では「仙舟人と豊穣の忌み者の境界」についても一つのテーマになってくると考えられます。「戦後」のことについても少し考えてみましょうということです。
おわりに
まとめるとこうです。左サイドが仙舟同盟の外部で右サイドが仙舟同盟の内部の話です。内と外の両方に足をかけていたのが薬王秘伝のイメージです。
点線は推測を指しています。
薬王秘伝は呼雷の逃亡を計画していたこと、羅浮龍師は、曜青持明は術の使用から、そしてカンパニーは「棺」の件です。曜青とカンパニーは縁が深いとされているのですが、持明族との関係は不明なので省いています。
けっこう時間かかりましたがこれで羅浮の背景についてほぼまとめることができたと思います。羅浮は難しそうなことを言っているように見えるのですが、その背景は筋が通っているので読んでいて参考になる部分がかなりあります。
記事を書くのに時間かかり過ぎたのはちょっと反省。
次はシムランカ(原神)の記事を更新する予定です。
(おわり)
- 遺物「都藍の黄金ドーム」 ↩︎
- 符玄「ストーリー・4」 ↩︎
- 書籍「丹枢の日記」 ↩︎
- 書籍「ベニーニ学士の破損した記録」 ↩︎
- 書籍「薬王秘伝-証拠収集」-「龍蟠蛟躍」の薬理作用に関する考察 ↩︎
- 書籍「雲騎軍より十王司に引き渡した重罪人リスト」 ↩︎
- 書籍「羅浮若木災異の始末に関する考察・摘要」 ↩︎
- 白露「ストーリー・4」 ↩︎
- 開拓クエスト・幕間「狐斎志異」 ↩︎
- 仙舟で最も重大な十の罪。書籍「不赦十悪詳細解釈」を参照。具体的には、「長生に堕とす」、「不死を求める」、「心智を乱す」、「魔陰に陥れる」、「同胞殺し」、「機要窃奪」、「破牢釈囚」、「盟約の離間」、「兵禍を招く」、「仙舟傾覆」の罪をいう。 ↩︎
- 白露「ストーリー・4」 ↩︎
- 符玄「ストーリー・3」 ↩︎
コメント
仙舟人と豊穣の忌み者の境界で出てくるモゼの下にある造翼者らしき絵はどこで見れますか?
これは「羅浮古代紋様の拓本に対する考察」の「生劫火劫」という部分にあります。テキストの内容から奥に映っているのが金人で手前が造翼者と考えられます。