レムリア史を探る

原神

この記事はレムリアに関する資料を再点検し、まとめるものです。

※修正予定あり(7/23)

レムリアに関しては資料まとまってそうで実は原神の中でも整理が難しい部類に入ると思います。なぜなら資料によって書き方が異なるからです。フォンテーヌでは物語の形で後世に伝えられたりしており、微妙に整合性が取れないところがあります。

※例えば『シェロイとシリンの物語』とジュラバドの歴史の関係のようなものです。物語に語られていることとテキストでは食い違うことがあります。私の記事では食い違いがある場合は「物語」については補充的に使います。

あまり情報を多くしてもかえって分かりづらくなるので削るところは削りました。

この記事ではレムリアの歴史をレムス、ボエティウス、エリニュスという3人から振り返ります。補助的にあまり知られてなさそうなアウレリウスの死、エリニュスの「罪」、エリニュスの最期について書きました。

任務「諧律のカンティクル」のネタバレがあるので注意してください。青字の部分は補足説明になります。

レムスとシビラ

シビラとの出会い

魔神レムスはオアシスの歌い手でしたが、砂の王(キングデシェレト)に仕えることを望まず、流浪の道を歩むことになります。時期的にスメールの魔神戦争だと考えられます。

彼は高海を墓場にしようと考え、誰も踏み入れたことのない都市の廃墟に立ち入ります。回廊を抜けて神殿の廃墟の中心に辿り着くと、銀の杉の樹の下金の蜂シビラに出会いました(響き合う諧律の前奏)。

シビラ
「遠方より訪れし旅の者よ、これは偶然ではない。運命の手がそなたをここに連れてきたのだ。」
「我は銀の樹を守る使者であったが、長い時の中で心も形も失ってしまった。」
「だが、我の目には未来が見える。旅の者よ、そなたは再び都市と臣民を手に入れるだろう。」
「そなたが築き上げた国は繁栄し、いつの日か高海を統治するだろう。」
そなたは彼らに文明と正義をもたらすが、彼らはやがてその正義のせいで滅びる。」
「結末を知ってもなお、旅に出るというのなら、上へと導こう…」
レムス
「予言する金の蜂よ、もしこれが本当に運命だというのなら、選択の余地などないだろう?」
「もし選択する機会があるのなら、あなたの言ったその不変の結末は必ず変えられるだろう。」1

新しい国家の建設

レムスはメロピスに高塔を建て、離散した人々を寄せ集め、新たな国を作りました。これは「そなたは再び都市と臣民を手に入れるだろう」というシビラの予言のとおりでした。

しかし、予言が当たっているとなると滅亡の予言の信憑性もいよいよ増してきます。レムスはそのことが心配になりました。

シビラは結末の決まった未来は事ができないと言いましたが、衆の水の主(エゲリア)ならばその破滅を招く原因を探る知恵を有しているかもしれないといいました。そこで、レムスは一縷の望みをかけてエゲリアに会いに行くことにします。

レムス
「予言の通り、栄光の王になり、民に文明をもたらした。」
「海に平和を与え、正義に基づいて大地を治め、進歩と秩序を天下に広めた。」
「しかし、新たに創られた栄光の国が繁栄するほど、ますます不安と悲しみを感じるようになっていく。」
「予言では繁栄は百年続くという。だがその後は?破滅する種がすでに芽生えている。」

シビラ
「栄光の王よ!盛衰と変化は世の常であり、フォルトゥナの法則だと言ったはずだ。」
「貧乏でも裕福でも、皆は運命の奴隷。玉座に登ることも、塵になることもそうだ。」
「運命の歯車は冷酷に回り続ける。いくら抗おうと、来るべき結末を変えることはできない。」
「波乱万丈な劇のように、終幕は最初から決まっているのだ。なぜ悲しむ必要がある?」

「運命に定められた審判の時が訪れれば、無慈悲な波は儚い栄光と幸福をすべて呑み込むだろう。」
「必ず訪れる未来を見ることはできるが、破滅を招く原因を探る神聖な知恵は持ち合わせていない。」
「だが光なき海の最深部、溢れる源水の国では、衆の水の主(エゲリア)が幽閉されていることを知っている。」

「無限の海がそなたの王国を呑み込むと予言されたように、彼女は答えを知っているかもしれない…」2

幽閉されたエゲリア

エゲリアは天理の許可なく人間を創造しようとしたため罰として深海に幽閉されました。

深海には龍の子孫が住む王国があり、ヴィシャップのプリンケプスがエゲリアの監獄を守っていました。

レムスはプリンケプスと一度は剣を交えたのですが、音楽を用いて来意を伝えるとプリンケプスはそれに応えました。そして、エゲリアに会います。

プリンケプス
「凡人の僭主よ、お前は根も葉もない呪いを憂い、運命の鎖に縛られると愚痴をこぼす。だが、我が一族がかつて百倍の苦痛を受けたことを知らぬのだろう。」
「ワシらは土地と太陽を失い、光のない海底で生きながらえるしかなかった。」
「凡人の僭主よ、お前も知っての通り、運命は高天の軌跡であり、決して変えることはできぬ。お前の考えは裏切りに等しい。」
「じゃが、もし本当にそのような愚かなことをしようというのなら、衆の水の主に会わせてやろう。」3

レムスはこの面会により「恐ろしい秘密」を知りました。しかし、救いの答えは一切ありませんでした。そして、エゲリアが犯した罪とそれによってフォンテーヌ人にかけられた呪いも知ることになります。

こうした事実にも関わらず、彼は諦めませんでした。彼はエゲリアから「純潔の水」を一杯もって監獄を後にします。

レムス
「海が我が臣民を呑み込もうとするならば、彼らの魂を水と相容れないイコルに封じ込める。」
「時間が我が国を朽ちさせようとするならば、精銅と磐石を使って彼らに朽ちない身体を作る。」

こうしてレムスは魔像を作ることになります。

フォルトゥナの解明

まずレムスが行ったことは、エゲリアからもらった「純潔の水」を用いてフォンテーヌ人の魂をイコルに閉じ込めることでした。

この「純潔の水」は原始胎海の水であったと考えられます。フォンテーヌ人はエゲリアが原始胎海の水を用いて作り出した疑似的人類であり、その「呪い」として原始胎海の水に触れると溶けてしまう性質がありました。

ヴァシェに溶かされてしまった人々やシルヴァやマルシラックのようにたとえ原始胎海により溶けてしまったとしても純水精霊として残る部分があると考えられます。これを血液としてまた鋼鉄の肉体を与えてやれば新しい「人間」を作ることができると考えられます。それが魔像でした。

レムスはこうして「不滅の軍団」を作り上げます。

シビラ
「そなたの国は怒涛に滅ぼされるだろう。なぜなら、定められた運命は変えられないのだから。」
「彼らは未だに見えない糸と繋がり、傀儡のように苦厄の終末へと突き進んでいる。」4

朽ちない新人類を作ったとしても、再生と滅亡を招く「運命」を克服しなければすべてが破滅してしまいます。レムスは閉じこもりながら運命の主の隙を探しました。

そしてレムスは、俗世の弦の音から「フォルトゥナの秘密」を解明しました。彼は運命の音符を一つ一つ読み取ったとあります。つまり、レムスは「フォルトゥナ」の音階を見つけたものと考えられます。宇宙の音楽(Musica Mundana)の解明だったと考えられます。

「オアシスの歌い手」であり、音楽を活用した統治をしていたレムスならではの解決方法でした。そこから生み出されたのが「調和と繁栄の楽章」=「フォボス」でした。

レムスの当初の予定では新しく生み出された「運命」は鎖として人々を束縛するものではなく、自由な人々がそれぞれ自分の運命を掌握できるような設計だったらしい。しかし、人々は自分で考えることをやめてしまい、特定の考え方を迎合するようになってしまいました。

レムスはフォボスを止めるために自己犠牲の道を選びます。これは皮肉にも彼が逃げた砂の王(キングデシェレト)と同じ末路のように思えます。

旅人は「フォボス」を破壊し、元素の循環に返してやろうというのが「諧律のカンティクル」の大筋でした。

ボエティウスとカッシオドル

二人の出会い

ボエティウスはレムリアのアウレリウスによってその才能を見出されました。元々は普通のフォンテーヌ人だったようです。このアウレリウスという存在が後々重要になってきます。

ボエティウス
「私は孤島の狭い王国の出身です。小屋で生まれ、葦の生い茂る村で育ちました。」
「そんな故郷に、ピカピカの鎧を着た兵士がやって来て、『征服』を告げたのです。」
「まだ子供だった私は、無邪気に半神たちの大きな背中を追いかけて首都に向かいました。」
「幸い手先が器用で澄んだ声を持っていたので、奴隷になる運命を免れました。」
「その後、神王に認められた私は、初めて文明と秩序の力に触れたのです。」
「自分の名前と部族を捨てて、私は生まれ変わりました。世の人は『ボエティウス』の名しか知らないでしょう。」5

ボエティウスは遠征先でカッシオドルと出会ったと考えられます。カッシオドルの故郷はレムスによって滅ぼされ、その生き残りがエリニュスとカッシオドルでした。

若い勇士(カッシオドル?)
「誇りは栄光の王国に住まう民の胸に咲く黄金の花のようなもの。神王の遠見の下に、もはや貧弱な未開の地はないだろう。」
「誇りは栄光の王国にとって尊厳の盾であり、金色に輝く矛先であり、匹敵するもののない神王の権威を守っている。」
「権力によって締め付けられてこそ秩序が生まれ、秩序の支配の下、芸術と美の自由が咲き誇る。」
「美しい黄金の国では、弱小·蒙昧·野蛮は決して容認されず、庇われもしない。臣従するか、滅びるかだ。」
若い楽師(ボエティウス?)
「友よ、兄弟よ。貧しい過去に未練を抱くな。昔日の人が持つ、上辺だけの卑しい尊厳に惑わされるな。」
「貧弱な肉体と精神を捨てて、鋼のように強く正しい人間になったのに、なぜ些細なことでため息をつくのか?」
「友よ、兄弟よ。バネのように永遠に変わらぬ心の旋律に耳を傾けるがよい。神王が君にささやいているのだ。」
「栄光の王国は、完璧な黄金の未来だけを見据えている。昔日の人は必ず滅びるという終曲が未来で奏でられるだろう。」6

差別意識の始まり

「毒龍スキュラは我々の多くの等を破壊し、我々の楽師を殺害した」とあることからレムリア滅亡後の話のようにも読めますが、レムスの夢の中の話です。

カッシオドル?
「まさに私が憂い、嘆いた通りだ。兄弟よ、君は高らかに歌っているとき、弱者の声にも耳を傾けるべきだった。」
「誰もが故郷や自然を奪われたいわけではない。誰もが我々の旋律を受け入れるわけではない。」
「兄弟よ、君は彼らを『昔日の人』と呼んでいた。だが昔日に忠誠を誓った人にも、無視できない執着と尊厳があるのだ。」
「我々は意のままに他人を征服し支配できると思っていたが、栄光の王国の輝きはどうして――」
ボエティウス?
「なんたる軟弱さだろうか!惰弱な哀れみの心がお前の知恵を曇らせ、心をひ弱にし、背後の弱点となって現れたのだ。」
「野蛮と蒙昧が依然としてフォンテーヌの土地に潜んでいる。フォンテーヌの水源を損なっている以上、根絶やしにせねばならん。」
「もし蛮族が壮大な黄金の秩序に溶け込もうとするなら、彼らを受け入れただろう。栄光の王が我々を受け入れてくれたように…」
「だが毒龍スキュラは我々の塔を破壊し、我々の楽師を殺害した。害をなす蛮族には、もはや救いを受け入れる価値もない。」
「受け入れる価値がない以上、土地と水源から彼らを一掃すべきだ。疫病を根絶し、野火を消し止めるのと同じように。」

こうした北方の蛮族に対する差別感情がなぜ生じたのかについて明確には書かれていません。ボエティウスもカッシオドルも元々は蛮族出身でした。

一つ考えられるのがフォンテーヌ人の抵抗でしょう。レムスが正しいと信じ、自分たちを新人類へと改造してくれるというのにそれに抵抗し、あまつさえ楽師を殺したりしている。

そして、決定的だったのが調律師アウレリウスの死だったと考えられます。

アウレリウスの死の真相とは?

アウレリウスはレムリア帝国の4人の調律師の一人で、古株だったと考えられます。彼については早くから北方遠征をしたという記録が残っています。当時、バラバラな部族に分かれていたフォンテーヌでは武力を誇示するだけで簡単に帝国の版図を拡大することができたようです7

しかし、アルモリカを征服した時に流れが変わります。これ以降、部族が抵抗を見せるようになりました。アルモリカとはエリニュスが引き取られた地であり、おそらくエリニュスの動きが関係していたと考えられます。

この抵抗の中、アウレリウスはフォンテーヌ人と手を組んだ内通者によって殺害されてしまいました。

以上がレムリアに伝わる大調律師アウレリウスの話で、次は物語に出てくるアウレリウスの話です。

『アウレリウス戦記』はコペリウスが書いた劇でアウレリウスはフォンテーヌの英雄として描かれています。

アウレリウスは敵の罠にまはり、味方とはぐれてしまいます。敵軍に襲われているところを少女ドリュアスティスの弓によって助けられます。

彼女はこの地に戦いをもたらすのはやめてほしいとアウレリウスに頼みました。ここまでがフォンテーヌに伝わる伝説なのですが、改変され様々な物語が派生しています。

複数ある物語のうち、アウレリウスが謀殺される展開があるのですが、おそらくこれが作中の史実だと考えられます。アウレリウスは精霊の少女の説得を聞き入れ、軍を撤退させます。しかし、その途中で「狡猾な裏切り者」に謀殺されたというものです。

つまり、アウレリウスは北方への侵略を止めようとして、帝国内の好戦派によって暗殺されたのではないかということです。あとはこの暗殺者を「裏切り者」として殺害すれば戦争の大義名分を得ることができます。

※ここについてはエリニュスの介入があった可能性もあります。つまり、エリニュスの「罪の意識」が生まれたのはこのような卑怯な手を使ったからというものです。ただし、こちらの根拠に乏しい。

フォンテーヌにはドリュアスという部族の集落がありました。それをコペリウスがフォンテーヌに沿った物語に書き換えてしまいました8

レムリアの滅亡

おそらくこれがボエティウスが不協和音を徹底的に排除しようとしたきっかけであると考えられます。そして、この差別意識がフォボスに乗っ取られるきっかけにもなったと考えられます。

なぜならボエティウスが一番強い感情を持っていたからだと考えられます。

ボエティウス
「一時の狂気のせいで、彼は我々全員を裏切った。」
「秩序は容易には変えられない。人を悔い改めさせるのもまた然り。」9

ボエティウスはレムスの企みを止めるべくスキュラを封印しました。こうして、レムリアの残党はボエティウスの下に集まります。

金色の劇団

レムリア帝国は滅亡しましたが、ボエティウスを中心に遺民が集まり「色褪せた城」を建設します。そこで彼らはフォンテーヌ人に対して復讐しようとします。

「黄金の劇団」なるものの伝説が残っています。そして、カッシオドルは「黄金ハンター」をしていました。ボエティウスは帝国が滅亡した後に、フォンテーヌが北方の蛮族(フォンテーヌ人)に支配されていることを納得できず、乗っ取りを図ります。

ボエティウス
「なんと恐ろしい!完璧な秩序がまた野蛮にも踏みにじられ、弱者と蒙昧が帝国の領土を占領した。」
「精霊と泉、泉と騎士…子どものたわ言が叙事詩に取って代わり、俗謡が楽章に取って代わった。」
「永遠に続くはずだった権力が神王の一時的な狂気によって打ち砕かれ、今また新しく生まれた蛮族の国に弄ばれている…」
「偉大な帝国が野蛮に戻るのか?無知と蒙昧が理性と文明を征服するのか?」10

カッシオドルは「黄金ハンター」となりこれを阻止し、「色褪せた城」を封印しました。しかし、ボエティウスは消えておらず、フォボスのもとで力を蓄えていました。

鎮魂歌(自滅コマンド)により解放されたレムリア人は無事、フォルトゥナの下へ、元素の循環へとかえっていきました。

エリニュス

エリニュスとは何者か?

彼女については「諧律のカンティクル」では全く触れられていないのですが、レムリア龍族と対抗するフォンテーヌ人の側の中心人物です。

※ここの「フォンテーヌ人」とは広く現在のフォンテーヌ地域に居住していた部族、という程度の意味で用いています。「呪い」を受けたフォンテーヌ人です。

※フォンテーヌで魔神戦争があったのか?という記事を書きましたが、魔神vs魔神という意味での魔神戦争はフォンテーヌではなかったと考えられます。魔神レムスの自滅によって、フォンテーヌでは幽閉されたエゲリアが魔神の格をもらって執政になったと考えられるからです。結末としては、スメールの魔神戦争と似ていると思います。あちらはキングデシェレトが自滅することによって、マハールッカデヴァータが草神になったと考えられます(ただし、これは明文の根拠を欠く)

エリニュスの故郷は神王レムスによって滅ぼされました。その虐殺から逃れられたのは二人エリニュスと「高慢な調律師と出会い、最後には権威の継承者に抜擢されたもの」(カッシオドル)だけでした。

数奇な運命で二人は正反対の立場となってしまいました。

エリニュスはアルモリカ島の領主に引き取られ、「純水」を守護する側になります。レムスの下に統一されていたレムリア帝国とは異なり、当時のフォンテーヌ人はリーダーを欠き、バラバラの部族に分かれていました。

バラバラな諸部族を統一し、帝国の辺境で反撃の狼煙を上げたのがエリニュスでした。

純水騎士エリニュスについては二つの物語があると考えられます。レムリアと戦う物語「純水の杯」を探し、衆の水の主(エゲリア)を訪ねる物語です。

ここではレムリアと戦い、戦いが終わったに、エリニュスが「純水の杯」を求める旅に出たと考えます。

※純水騎士は複数いるのでエリニュスは別行動していたと考えることもできますが、個人的には不自然だと思います

レムリアへの抵抗

エリニュス?
「高貴なる使者のお方、リマシ皇帝にお伝えください。この世の万物で我々が膝を折る相手は、
慈心深き衆の水の主、我々のために罪を背負う女主人(エゲリア)のみです。最も尊く最も偉大な統治者と呼べるお方。
いかなる王も、神も、すべて、その名前に背けません。あの方は間違いなく善の極みであり、輝きの極みなのですから。」11

エリニュス
「私たちは、白銀の不朽の花に誓います。黄金の僭主を高海から追放し、血と涙でもって不義の者たちを一掃すると」
「そして、清らかな泉が再び元のように流れるまで、純水に由来する精霊たち、万水の主が遺した恩恵を守ると」12

この抵抗の過程で先ほどの調律師アウレリウスの死が起こったと考えられます。

「杯」を求める旅

エリニュスが旅に出た目的は贖罪あらゆる願いを叶える「聖杯」を求めるためだったと考えられます。

エリニュス?
あらゆる願いを叶える聖なる器…ふん、あの純水の精霊がそう言ったのであっても、あまりに荒唐無稽な話です」
「水の中の血を洗い流せないのと同じで、を洗い流せる者はいない。たとえ人々がそれを忘れたとしても、罪は罪なんですから」
「白昼の輝きを取り戻せないのと同じで、過去を取り戻せる者はいない。過去がとうの昔に失われたことなど、私でさえ知っていますから」
「……」
「しかし、もし本当にそのような聖なる器がこのおかしな世界に存在するというのなら、それが本当にあらゆる願いを叶えられるのだとしたら…」
「もし本当に未来のためにすべての涙を拭き、高海の後継者に二度と過去の苦痛を味わわせないのだとしたら…」
「最後に一度だけ、私をその虚妄に溺れさせてほしい」13

???
「原罪を背負いし高海の子よ、苦しみを味わいし我等が兄弟姉妹たちよ」
「汝は運命の凶兆を知り、最後に訪れるであろう災禍を目にした」
「心を強く持て。怯える必要も、恐れる必要もない」
「原初の水を求めよ。あらゆる願いに応じる原初の杯を求めよ」
「彼女に願いを告げれば、すべての罪に対する慈悲を、やがて得られるであろう」14

「純水の杯」の正体と目的

あらゆる願いを叶える聖杯はおそらくエゲリアがレムスに与えた「純潔の水」とそれを入れた金杯のことだと考えられます。

これがレムスの願いを叶えたため「願い」を叶える聖杯伝説として北方に伝わったものだと考えられます。レムリアの金杯についてはボエティウスが滅亡の際に持ち出しています。

エリニュスが叶えたかった願いはおそらくカッシオドルを元に戻すことだったと考えられます。

エリニュス?
「████、私の████…もう意に反することを無理に言う必要はありません」
「あなたの魂を冒涜し石牢に閉じ込めたのは、あの呪われた僭主(レムス)であることを私は知っています」
「心配はいりません。私の████…あの時の約束を忘れたことは、一時もありません」
「いかなる代償を払ってでも、私があなたをあの永劫に冷たい檻から救い出してみせます」
「私たちが再び万水の主の懐で寄り添い、苦厄に悩まされることがなくなるその時まで」
「青き蝶が再び舞い、私たちの魂をあらゆる水の対岸へ運ぶその時まで」15

しかし、上述の通り「杯」とその中身はおそらくエリニュスの願いを叶えるものではなかったと考えられます。

エリニュスの「罪」とは?

エリニュス
「衆の水を司る陛下。切望していた純水の杯を賜り、この旅路を終えてよいと認めてくださったことを感謝いたします。まだこの世に残っている騎士、即ちあなた様のしもべたちは、引き続きあなた様と未来の国に忠義を誓うでしょう。私はあの気高い楽師に随行し、今も姿を隠す影を狩り、正義を執行します。闇を征く者が光をよく知るのであれば、光は闇の全てを知らず、善も儚い夢に過ぎません。この善良な騎士たちをあなた様に託します。彼らの罪をお許しください。」16

エリニュス
「衆の水を司る陛下、私の凶悪さを隠すことなく、私の罪をお伝えします。この罪はあまりに重いため、赦される余地はありません。あなた様の気高くて純粋な理想は、このような罪の責任を容赦するべきではありません。私の憂いを解き、心に慰めを与えられるのは放逐のみです。
天からの使者はおらず、度を越した罪状もない。あなたの慈愛と慈悲の国では、罪を裁定できるのは罪だけであり、裁くことができるのは人だけです。
ただ私の苦難を心に刻み、我々の受けた咎をご覧いただければと。この苦難と咎は薬草と毒草のようなものだからです。
私の名をあなた様に託します。我々を厳しく責め立てる者の名が残った時、永久に呪われ、義人と認められないことを願って。」

この「私の名をあなた様に託します」という部分から、エゲリアはルキナの泉という重要な場所がある地にエリニュスの名前を残したのではないかと私は考えています。

ここで「私の罪」というのが全く語られていません。エリニュスは何をしたのでしょう?人を愛すべき存在が人を殺めてしまったのならば確かに罪があると言えます。もっとも、個人的には、もっと血なまぐさいものなのではないかと考えています。

『北境の蛮族に関する考察』にエリニュスのことが記されているのですが「大調律師ユーレゲティアが言うように、彼女は神などこれっぽっちも信じていない――信仰を持っている人が神の名を借りて残虐な行いをするはずがない」とあります。

戦争相手国の言い分を真に受けるのもどうかと思いますが、事実としてフォンテーヌ人とレムリア帝国では戦力面に大きな差がありました。

相手は魔像軍団です。そうした物的・質的な優位を覆すために手段を選ばなかったと考えられます。そうした行為がエリニュスの罪の意識につながったのでしょう。

聖剣の返還

もちろん下敷きにしているのはベディヴィエールが聖剣エクスカリバーを湖に返す場面だと考えられます(だからここでも3回)。オートクレールが『ロランの歌』なので色々混ぜています。

「気高きオートクレール、光り輝く剣よ!そなたはかつて無数の戦を平定し、この大地の戦いを終わらせた。いつか気高き人が、私の七倍は勝る気高き人が拾い上げ、私の七倍の功を挙げるだろう。共に過ごした数多の良き日々よ!ああ、長い夜は間もなく明ける、すでに私は正義という冠を永久に失っているのだ。衆の水の主の哀れみを!不義なる者の手に渡らぬよう、美しく神聖なる湖水の煌めきを、ここで湖にお返しする!」

こうしてようやく聖剣オートクレールは湖へと沈みました。

エリニュスの最期

複数の資料はエリニュスのその後の行方は分からないとなっています。

「海色の澄んだ目をした騎士はそう言うと、手にした剣を湖に放り込んだ。すると剣は音を立てずに沈み、跡形もなく消えた。その後、彼女は始終付き従っていた精霊と共に立ち去り、以降この世でその姿を見た者はいない。」(エリニュスの歌)
「剣の持ち主だった騎士は感慨に耽った様子で顔を上げた。谷を去った後、その行方を知る者はいない。」(静水流転の輝き)

しかし、「私はあの気高い楽師(カッシオドル?)に随行し、今も姿を隠す影を狩り、正義を執行します。闇を征く者が光をよく知るのであれば、光は闇の全てを知らず、善も儚い夢に過ぎません。」(エリニュスの歌)という部分を見ると「黄金ハンター」であるカッシオドルと同行していたと考えられます。

ボエティウスも同じ章句を引用していましたが、これはレムリアの頌歌からの引用です。

カッシオドルはこれに「いつの日か、水と土が豊かにあふれる場所で…また…再会できるだろう…」と付け加えています。

「再会」とはもちろん旅人とパイモンのことを言っているのですが、ここにはエリニュスも入っていたと考えられます。

エリニュスはフォンテーヌ人、カッシオドルは魔像です。エリニュスは先に亡くなってしまったと考えられます。

そして、エゲリアの「聖杯」が願いを叶えてくれるようなものではなかったこと考えると、彼女は最期までカッシオドルの魂を解放することはできなかったと考えられます。現に旅人がカッシオドルの魂と出会っていますからね。

アランナラがサルバで金色のナラヴァルナと再会することを望んでいたように、テイワットの霊魂は地脈を通じて元素として循環していると考えられます。あの世界では元素が生命の循環を象徴しているものだと考えられます。

補足:静水流転の輝き

「静水流転の輝き」のテキストは2パターンあります17

『エリニュスの歌』と照らし合わせると左が真正であると考えられます。しかし、「至純の杯」をエゲリアを解放するために使っているなど物語と異なる点もあります。

そうすると右のテキストはなぜ用意されたのかが謎。一つ考えられるのは戯曲として残ったのが右の物語だというものです。

「万水の主」という呼び方はレムリア側がするものとおもいきや「在りし日の歌」で普通に使っているので特に使い分けはなさそうです。

真?偽?
「深き罪が永遠の都に没落をもたらし、無数の奴隷と僭主が闇夜の荒波に沈んで命を落としました」
「我らはエゲリアの名にかけて誓う。純水の杯を探し出し、あの方の国に返すと
「これこそが、我らの生まれ持つ原罪を償い、同じ死を避けるための唯一の方法…」
「いかなる犠牲を払おうとも、純水騎士の名において、必ずや気高き使命を果たしましょう
「深き罪が永遠の都に没落をもたらし、無数の奴隷と僭主が闇夜の荒波に沈んで命を落としました」
「我らは母なる神の名にかけて誓う。純水の杯を探し出し、あの方を幽閉する束縛を打ち砕かんことを
「これこそが、我らの生まれ持った原罪を洗い流し、同じ死を避けるための唯一の方法…」
「いかなる犠牲を払おうとも、必ずや正義の名において為すべき使命を果たすのです
壮大な楽章の終わりも、また定められし終演を迎えた。揺らぐことなき正義を守る人々は、古の世の栄華を失った廃墟でこう誓いを立てたのだ。
この水色の杖は、かつてエリニュスという騎士が所有していたものだ。調和と栄光の歌が響き渡る時代、彼女は高海諸国の神に抗う人々を束ねた。
伝説によると、彼女の故郷は遥か昔、神王の憤怒によって燃やされた。そして黄金の都より来た軍団は、彼女の親族をみな奴隷のように酷使し虐殺した。
その運命から逃れられたのはたった二人。一人は戦火の中で高慢な調律師と出会い、最後には権威の継承者に抜擢された。
もう一人は衆の水の主から憐れみを受け、アルモリカ島の領主に引き取られ育てられた。そして、神王に奪われていない純水を守護した。
同じ故郷を持つ末裔であろうとも、運命は彼らを善と悪に隔てた。まるで水中の浮萍が最後には四散するかのように。
壮大な楽章の終わりも、また定められし終演を迎えた。報復に耽溺する人々は、古の世の栄華を失った廃墟でこう誓いを立てたのだ。

この水色の杖は、かつてエリニュスという歌い手が所有していたものだ。調和と栄光の歌が響き渡る時代、彼女は高海諸国の神に抗う人々を束ねた。
伝説によると、彼女の故郷は遥か昔、神王の征服によって滅ぼされた。黄金の都より来た軍団は、多くの先住民たちを奴隷のように酷使し虐殺した。
その運命から逃れられたのはたった二人。一人は戦火の中で高慢な調律師と出会い、最後には権威の継承者に抜擢された。
もう一人は崩れた骸骨の間に身を隠し、アルモリカ島の首領に拾われ育てられた。そして、神王に奪われていない純水を守護した。
海風がそよぐ中、共にあの水色の美しい歌に耳を傾けた仲であろうとも、運命の流れはついに二人を背反の彼方へと引き裂いた。
こうして、海風と、湖中の少女の優しい囁きに従い、気高く逞しい騎士達は確固たる足取りで旅に出た。
想像を絶するほど多くの試錬と、世にも稀な困難を幾多も乗り越え、ついに人々の最も誠実な願いを高天に伝えた。
善良なる清き心によって、無数の犠牲を経て得られた純水の杯により、最終的に衆の水の女主人は古の幽閉から解き放たれた…
こうして、潮汐と、精霊の優しい囁きに従い、仇敵の壊滅に目をむいた剣の歌い手はついに旅に出た。
想像を絶するほど多くの試錬と、世にも稀な苦難を幾多も乗り越えたが、いまだに純水の杯を見つけ出せずにいる。
ちょうどその時、高天が万水の女主人を選んだ。そして彼女を古の幽閉から呼び戻し、黄金の君主の座を引き継いで諸海の廃墟を統べるよう命じた…
「衆の水の主よ、慈心のエゲリアよ、あなたの審判を所望します」
「かつては多くの善行と功績を為した私も、この旅の中で深き罪に染まってしまいました」
「あなたの理想は一点の穢れも受け入れるべきではありません。私の心が安らぐためには追放されるしかないのです」
「衆の水の主よ、慈心のエゲリアよ、どうか最後の悲願を聞き入れ給え——」
「万水の主よ、誉れある原初の母よ、どうかあなたの戒めをお与えください」
「かつてあなたのために多くの不義なる者を皆殺しにし、無数の城郭を陥落させました」
「どうか教え給え、諸海の後継ぎはどうすれば絶滅を免れるのか」
「万水の主よ、誉れある原初の母よ、どうかこの一度だけ慈悲を——」
湖水の煌めきのように清く澄んだ朝日の中で、切実で悲痛な言葉が、衆の水の主の心を打つ。
慈心に満ちた神は、人の子の願いを聞き届け、彼女の前途を祝福した。
神も知るように、無私な者にとっては正義の審判だけが寛大な赦しとなる。
あるいはそうすることで、その崇高な決意はいわゆる運命をも染め上げたのかもしれない。
滴る血のように暗い夕暮れの中で、切実で悲痛な言葉が、万水の主の心を打ち、
慈心に満ちた神は、かつてフォルトゥナの君主に述べたことのすべてを人の子に語った。
神だけが未だに知らない。独りよがりな願望の報いは、独りよがりな絶望でしかないことを。
あるいはそれによって、その幻想に満ちた破滅がいわゆる信仰の背景をも染め上げたのかもしれない。
湖水の煌めきのように潔白な水色の長剣は、エゲリアの祝福を伴って澄んだ光の中に沈んだ。
剣の持ち主だった騎士は感慨に耽った様子で顔を上げた。谷を去った後、その行方を知る者はいない。
とうの昔に血で汚され、漆黒に染まった水色の長剣は、最後の理性と共に砕け散った。
剣の持ち主だった歌い手は力なくよろめいた。谷を去った後、その行方を知る者はいない。
×名誉と報復に酔いしれた首領はついに彼女の夢の国を目にすることができなかった。かつて、同様に偉大な志を抱いた神が、いわゆる救いを探し出せなかったように。何年も後、黄金の狩人と称される楽師がその名を思い出したとき、彼の脳裏に浮かんだのは血でも涙でもなく、遥か遠くで響く葦笛の音と、あの水色の月下で揺れる美しい舞いだけだった。

おわりに

今回はレムス、ボエティウス、エリニュスの三人を軸にレムリア史をまとめました。

ver4.6の内容なのですが、よく考えたら水仙の任務も消化するのに数か月かかっていたので別に遅くもないかなと思っています。

この世界任務について私ならテイワットの「運命」から逃れようとしたが失敗し、元素の循環へと戻ることを望んだ人の物語とまとめると思います。ルネは一生懸命「運命」の束縛から抜け出そうとしている人でしたが、カッシオドルは「運命」とともにあることを望んだ人でした。

ブラッシュアップの都合で遅れてしまいました。次の日曜日はシムランカに関する記事を書きます。

(おわり)


  1. 「響き合う諧律の前奏」 ↩︎
  2. 「古海の幽深なる夜想」 ↩︎
  3. 「運命と輪廻の諧謔」 ↩︎
  4. 「降り注ぐイコルの狂詩」 ↩︎
  5. 「黄金の時代の前兆」 ↩︎
  6. 「黄金の旋律の変奏」 ↩︎
  7. 色褪せた城に落ちている「北境の蛮族に関する考察」参照 ↩︎
  8. https://wiki.hoyolab.com/pc/genshin/entry/5673 ↩︎
  9. 「黄金の夜の喧噪」 ↩︎
  10. 「黄金の劇団の褒賞」 ↩︎
  11. エリニュスの歌・上 ↩︎
  12. 「在りし日の遺失の契」 ↩︎
  13. 「在りし日の余韻の音」 ↩︎
  14. 「在りし日の約束の夢」 ↩︎
  15. 「在りし日の空想の念」 ↩︎
  16. エリニュスの歌・下 ↩︎
  17. https://wiki.hoyolab.com/pc/genshin/entry/4570 ↩︎
ManQ

原神も3年目となり新しい楽しみ方を探すべくブログを始める。
ストーリーのテキストをじっくり拾って読むのにはまってます。
神話は詳しくないので頑張って調べてます。

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